(大塚寿(エマメイコーポレーション代表)/写真=The 21 online)
(大塚寿(エマメイコーポレーション代表)/写真=The 21 online)

以前に比べ少なくなってきていると言われる接待だが、最近は、本来の意味での接待が増え、その意義が改めて見直されているという。本来の接待とはどのようなものか、最近の接待の実情と、印象に残る接待を作る秘訣を、営業の達人・大塚寿氏にうかがった。

受注狙いの接待は廃れつつある

接待のイメージは、ここ10~20年の間に大きく変わったと思います。

いわゆるひと昔前の接待は、営業目的のものが中心でした。顧客企業をもてなして受注を取りつけるという明確な──と言うより露骨な意図がありました。当然、企業同士の関係は不健全に流れがちで、バブル期には過剰な贅沢化も見られました。

しかし近年、コンプライアンスの重要性が叫ばれるに従い、企業の意識も変化しました。自社の信頼性を落とさないために接待を受けないと決めている会社や、受けるにしても会費制を提案する会社も増えています。接待する側にも、高額な会食の機会を減らし、経費節減を図る動きが見られます。この両者のニーズがあいまって、接待は現在、その数を大幅に減らしています。

では接待という風習はいずれ絶滅するのかというと、決してそんなことはありません。不健全に流れがちな受注狙いの接待がなくなったぶん、本来の意味での接待が残り、その意義が改めて見直されているからです。

この、本来の意味での接待とはどのようなものでしょうか。それは、現在も残っている接待の3つのタイプから読み解くことができます。

1つは「標準形」。ビジネスの場を離れて別の席を設け、親睦を深める集まりです。

2つ目は「打ち上げ系」。プロジェクト終了などの際に、ともに大きな仕事をやり遂げた喜びを分かち合い、労をねぎらい合う機会です。

3つ目は「お礼系」。お世話になった相手の定年退職や異動に伴う歓送迎会などがこれに当たります。

これらはいずれも、"下心"を伴わない会合です。感謝や慰労といった、コミュニケーションそのものを目的にしています。

ビジネス上のつきあいが濃くなるか否かを握る鍵は、結局のところ人間関係にあります。目先の損得抜きの、人間関係という土台を作る場としての接待は、やはり存在意義の高いものと言えるでしょう。