印象に残る接待の作り方とは?
損得抜きとはいえ、もちろんメリットもあります。中でも相手の会社の様子や、キーパーソンの持つ仕事観などの情報を通してニーズを読み取れるのは大きな利点です。
接待はビジネスでもプライベートでもない外と内の間、つまり縁側のような場であり、そうしたシチュエーションでは本音も出やすいもの。ですから接待を企画する際は、"オフィシャルとカジュアルの間"を意識し、話しやすい雰囲気作りを目指しましょう。
最初に誘うときは、さりげなくが基本。アポイントで会ったときなどに、雑談の中からきっかけを作ります。たとえば、食べ物の好みをつかんでおいて「魚のおいしい店があるのですが」と声をかけたり、共通の趣味があるなら、それに絡めて「一度、歴史談義をしませんか」などと誘ったり。また、「ウチの部長が一席設けたいと申しております」も良い誘い方です。部長の申し出となると、相手側からも相応のポジションの人物が出席する流れになります。
なお前述のとおり、近年は接待を受けない方針の会社も増えています。もし相手がその意を伝えてきたら、しつこく押さないこと。相手側の立場と意思を尊重することが大事です。
さて、実際に接待をすることになったら"3つの心がけ"を持っておきましょう。
1つ目は、双方が楽しむ。もてなしの心を持ちつつも、自分も楽しむこと。相手を立てすぎて自分がくつろげなければ、その緊張が相手に伝わり、距離を縮めることができません。
2つ目はインパクト。相手の印象に残る店を選ぶことです。
たとえば「こんなところにこんな店が!?」という隠れ家的名店。相手の自宅の沿線ならばさらに喜ばれます。私の場合、東急沿線にお住まいの方ならば等々力(東京)の『すし処 會』という寿司店にお連れします。住宅街にたたずむ知る人ぞ知る名店で、大将は元プロ野球選手。プロ野球関係者も多数来店する、印象深い店です。
そして3つ目は、コンセプトを作ること。
接待の目的・相手の好み・自分のキャラ。この3要素を掛け合わせ、キャッチフレーズを頭の中で簡単に作りましょう。
たとえば、接待ではないですが、先日、以前お世話になった方と久方ぶりに会うことになった際に考えたコンセプトは"スペインBAR(バル)で熱い再会"。8年ぶりの再会を演出するために"情熱"のイメージがあるスペイン料理を選びました。このような方向性を定めることで、場の雰囲気が目的にマッチし、もてなしの気持ちが鮮明に伝わります。
他にも、シチュエーションごとにさまざまな工夫ができます。
招待者の中に女性がいれば、店の雰囲気や趣向に気を配ることも大切。ここで私がよく利用するのは、神楽坂(東京)の『ボン・グゥ 神楽坂』というフレンチです。この店は前菜中心のメニューが特徴で、細工を凝らした皿が次々に運ばれ、女性に大好評。リーズナブルな価格も魅力です。
自分の背景や人脈も店選びに役立ちます。銀座(東京)の割烹店『玉亭(ぎょくてい)』の女将は、リクルート時代の先輩。気心知れた店でこちらの意図を汲んだ細かなサービスを受けられ、安心して接待に集中できます。
真正面から、味も価格も一流の店でもてなしたいなら、自分の中で"日本一の名店"をジャンルごとに持っておきましょう。ちなみに私の和食日本一は、虎ノ門(東京)の『京料理 と村』。ミシュランで星二つの味はやはり格別。相手の印象にも強く残ること間違いなしです。