英国では「子供の独立資金」というスタンス
こうした事業者のセールス活動に加え、日本のように「学資保険」や「教育資金」という文化が浸透していないせいか、ジュニアISAは一般的に「子供が社会人として巣立つ時の資金」として受け止められているようだ。
これは英国人が子供の教育に無頓着というわけではなく、基本的に「学費が親の負担になりにくい国」という文化の差にあるように思える。
ひと昔前までは大学も無料だったが、現在も公立校の義務教育(16歳まで)は誰でも無料。その後も19歳まではフルタイム(全日制)の学生である限り、大抵の専門学校などには無料で通え、低所得家庭には通学にかかる交通費や授業に必要な学用品をそろえる費用、果ては学食のランチまで支給される制度が整っている。
大学の費用を賄う「学資ローン(寮や一人暮らし用の費用も含む)」も比較的簡単に子供名義で融資が受けられ、子供が一定の所得(2015年は年収2万1000ポンド/約375万円以上)を得るようになるまでは返済する必要もない。また30年間以内に返済できなければ自然消滅する。
つまりどれだけ低所得家庭であろうと、それが原因で子供が進学できない――という心配が無に等しい国なのだ。こうした背景であれば、「ジュニアISA=教育資金ではなく、社会人になった時の巣立ち資金」という図式が成り立つのは、ごく自然の流れだろう。
ジュニアISAの利用層、筆者の事例
「政府の支援で気軽に子供の資金形成を始められる口座」としてのイメージが強いせいか、ジュニアISAの利用層は非常に幅広い印象を受ける。
「預金型」の場合は1ポンド(約178円)から口座開設OKというプロバイダー(事業者)が多く、好きな時に好きな金額を預入れることが可能なため、裕福層から低所得層までそれぞれの経済状態に応じて、子供のために貯蓄する手段として利用している。
筆者の第一子が生まれた当初は、開設の際に政府から250ポンド(約4万4600円)の「お祝い金」が支給されるCTFだったが、第二子誕生の年にジュニアISAに切り替わり、かなり損をした気分になった。
そこで廃止された「お祝い金」を少しでも取り返そうと、かなりの数のプロバイダーに問い合わせ、無料アドバイザーなどにも相談したが、ごく一般的な庶民レベルの預入れ金しか用意していなかった筆者のような親が、そこまでプロバイダーにこだわるケースは、まれなようだ。
「ギフト券や手数料、利率に惹かれた」という例も多いが、大抵の加入者は「自分や親戚、友人が既に利用している」という安心感が決め手になるようだ。長期投資になるため、5年後、10年後にもプロバイダーとして機能しているような「信用度の高さ」も重視される。