◆解約返戻金・その他返戻金
まずは、個人保険の解約・失効率の推移をみると、上のグラフのように、もともと1980年頃は、保有契約高の10%程度という相当に多い解約・失効があったわけである。それが、新契約の好調、保有契約の増加とともに次第に改善されてきた。
しかし、いくつかの保険会社が破綻するような1990年代後半にあっては、生命保険会社そのものへの不信から、解約が増加していった。近年はそれが落ち着き、各社が新契約獲得だけではなく、既契約の保全にも注力度合を増してきたということもあって、今までで最も解約・失効の少ない時代になっており、これはこれで望ましい傾向である。
その結果としての解約返戻金は、(残念ながら、保険種類別のデータにできていないのだが、)同様の傾向ではあるのだが、1990年代の突出した年度は、個人保険ではなく団体年金分野の解約返戻金であろう。
また近年は解約・失効率が低下傾向であるにもかかわらず、解約返戻金は急増している。ここでは会社ごとには示さないが、個人年金保険の販売が急増していた会社で大きな解約返戻金額となっているので、一時払個人年金の解約が増加したものであろう。
解約返戻金に関する収支ということで補足する。解約返戻金は、解約時の準備金そのものか、それ以下の金額(加入から日の浅い(数年とか)契約)に設定することが一般的なので、実は準備金の取り崩しによる「解約益」という利益が出ることが多い。
しかしそれは、将来の収入保険料により賄われるべきだった、経費等の回収にあたると考えられており、素直に喜ぶわけにはいかない。また、解約以後、当然のことながら保険料が収入されなくなるので、明らかにマイナスの影響である。(これも通常はそうだというだけで、実際にはケースによる。その契約の予定利率が5.5%という高い水準だったら?)
その他返戻金というのは、保険契約の諸変更に伴い、責任準備金に変更が生じる際の精算金である。契約転換が多かった頃は、転換に伴う精算金のため金額規模も大きかったが近年はそれほどでもない。(1988年以前の統計では、解約返戻金とその他返戻金の内訳がすぐには入手困難だったので、上のグラフでは合算で表示している。)