(写真=PIXTA)
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「もっと高い給与が欲しい」−−。それが転職したいと思う理由の一つになることは珍しくありません。しかし、いざ求人情報を見ても、給与額が書かれていないことがあります。「能力・経験により応相談」としている企業もあれば、「当社規定による」としているところもあります。応募者にしてみれば「規定って何?」「何だかはぐらかされているみたいだ」と感じるかもしれません。なぜ企業は給与額を明示しないのでしょうか。また応募後、いつ分かるのでしょうか?

はぐらかしている訳ではない

まず、企業が求人情報を出す段階で「応相談」としているのは、はぐらかしている訳ではありません。中途採用は新卒採用と違って、応募者の年齢も違えば、経験、能力などまったく違います。また、採用する企業の本音としては、「予想される貢献度だけではなく、前職の給与額も考慮しないといけない」と考えられていることもあります。そのため、はっきりした給与額を「書きたくても書けない」のです。

給与を正式に決めて応募者に通知するタイミングも、各社で異なります。一般的には、内定直前か内定後に決まることが多いようです。筆者は企業の人材採用をお手伝いする際、求人情報には「できる限り給与額を書く」ようアドバイスしています。とはいえ、「月額50万円」などはっきりとは書けず、「38万〜58万円」のように幅を持たせた表現になることが、ほとんどです。

気になるなら聞いても構わない

しかし、転職を決めるには給与額が重要だという人にとっては「いくらもらえるか分からないのに、選考に時間を取られたくない」という思いが頭をもたげるかもしれません。二次、三次と面接や適性検査を受けた挙句、「希望額とかけ離れた額を提示された」となれば、「最初から受けなければよかった」ということになってしまいます。これは採用する企業、応募者双方にとってマイナスです。

もし応募にあたって給与額が重要だ(無駄な面接をしたくない)と思うなら、電話して尋ねてみましょう。年齢や勤務年数、扶養家族などで給与額をシステマチックに決めている企業では、聞けばすぐに計算してくれることがあります。

いっぽう、年俸交渉をおこなう会社では、まさに交渉してからでないとわかりません。多くの会社はこの中間で、年齢や能力によって決めることになります。これらの場合も、「給与の幅」を聞くことは可能です。ただ、質問する相手が、社内の給与をどれだけ把握しているか、採用者の給与の決定にどれくらい関わっているかで、回答が変わってきます。

ここで注意したいのは、「給与月額38万〜58万円」と言われても、「38万円からスタート」ではないということです。また「どんなに成果を出しても58万円以上にはならない」ということでもありません。あくまでその幅の中で、“入社時点の”給与が決まるという意味です。勘違いする人がいるので補足しておきます。

また、モデル年収を聞くのもいいでしょう。年齢・年代ごとの収入が想像でき、あとあと希望額と提示額が大幅に開く可能性は低くなります。とはいえモデル年収は“理想的な社員”で算出される場合が多いです。「モデル年収は、平均よりも高めの金額」と思っておいたほうがいいでしょう。

もし「最低限50万以上なければ困る」という希望がある場合は、履歴書に明記してください。応募企業の給与レンジと大きくズレている場合は、書類選考で落としてもらえるので、無駄な応募が避けられます。

もし「1回くらい訪問してもいいかな」と思う企業なら、面接で聞いてみましょう。人柄や能力がわかっている分、事前問い合わせよりも、具体的に話してもらえる可能性が高まります。電話口に出る人が知らないことも、面接官ならこたえられるということもあります。

公開されている情報から概算する方法も

慎重な企業では、「正式に決まるまで教えられない」ということも、当然あります。この場合は、公開情報から目安をつけましょう。

新卒採用を行なっていれば、就職サイトにモデル給与が掲載されている場合があります。また、上場している企業は、株式情報として社員平均年収が公開されています。決算情報の人件費と社員数から、平均給与を算出できます。あわせて平均年齢も確認すれば、自分の年齢でだいたい給与額がいくらなりそうか想像することができます。

どうしても「お金の話」はしにくいものです。しかし、経験や実力もある30代・40代での転職は、新卒の就職とは違います。転職の目的は、給与額をあげることだけではないでしょうが、それでも重要なこと。家族がいればなおさら大切です。

給与についての質問は、いつしても大丈夫です。納得いくよう、しっかり確認しましょう。

梅田幸子(天職コンサルタント/採用育成コンサルタント)

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