要旨
日本国内の不動産投資市場において、リーマンショック後に落ち込んでいた海外資金による取得が再び拡大してきた。その中でもアジア資金による取得が飛躍的に伸び、米国と並ぶ主な資金の出所になりつつある。最近のアジア資金による取得の大規模な事例をみると、SWF(ソブリンウェルスファンド・政府系ファンド)による取得が目立つ。
しかし、そもそも長期安定的にインカムゲインを見込める不動産投資と保険事業との親和性は高いといわれるが、アジアの保険会社による日本国内での不動産取得事例はほとんど確認されていない。今後、アジアの保険会社が日本国内で不動産投資を積極化する可能性を踏まえ、アジアの主要保険会社の不動産投資について確認する。
拡大するアジア資金による不動産投資
日本国内の不動産投資市場において、リーマンショック後に落ち込んでいた海外資金による取得が再び拡大してきた。その中でも、2015年にはやや減少したものの、アジア資金による取得が飛躍的に伸び(図表-1)、米国と並ぶ主な資金の出所になりつつある(*1)。
最近のアジア資金による取得の大規模な事例をみると、2014年のシンガポールのGIC(シンガポール政府投資公社)による東京丸の内のパシフィックセンチュリープレイスの取得や、2015年初の中国のCIC(中国投資公司)による東京の目黒雅叙園の取得など、SWF(ソブリンウェルスファンド・政府系ファンド)による取得が目立つ。SWFの他では、REITなどの不動産投資ファンドや不動産会社が取得主体として名を連ねている。
しかし、そもそも長期安定的にインカムゲインを見込める不動産投資と保険事業との親和性は高いといわれるが、アジアの保険会社による日本国内での不動産取得事例はほとんど確認されていない。以下では、今後、アジアの保険会社が日本国内で不動産投資を積極化する可能性を踏まえ、アジアの主要保険会社の不動産投資について確認する。