日常生活の中で、嫌な出来事に出合ったりストレスを感じたりすることは避けて通れない。特に強いストレスがかかると、思考がよりネガティブになりがちだ。そのような時、「認知行動療法」を使うと、考え方や気持ちを柔軟に切り替えることができる。

代表的な「コラム法」は考え方や気分を整理

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(写真=PIXTA)

認知行動療法の中でも代表的なコラム法(認知再構成法)と呼ばれるものだ。物事のとらえ方、考え方、気分の流れを整理することで、バランスの取れた柔軟な考え方ができるようになる。

これから紹介する方法は、ノートなどに実際に書き出すことで、誰でも簡単に行なえる。ちなみに実際に心理臨床の現場で実践される場合は、専門家との協働作業として進められる。

Aさんの事例

Aさんは仕事でちょっとしたミスをしてしまい(状況)、「しまった。なんて自分は駄目なんだろう」 と考え(認知)、落ち込んだ(気分・感情)。気が進まなかったがやむなく上司に報告し、謝罪した (行動)。

「上司に駄目なやつだと思われるにちがいない」と思った(認知)Aさんの身体は緊張し、心臓もドキドキしてしまった(身体)。上司からは「困るよ。この前と同じミスじゃないか」と言われた(根拠)。

そこで「これでまた評価が下がってしまった。この仕事はもう自分には任せてもらえないだろう」と思い(認知)、上司が「君の仕事は別の人にやってもらうことに した」と話している姿を想像し(認知)、ひどく落ち込んだ(感情)。それを考えると胃も痛くなっ て(身体)、すっかりやる気もなくし(気分)、他の仕事にも手をつけられなくなった(行動)。

まず「状況」を記入する

ストレスを感じたときの「状況」をノートに記入する。いつ・どこで起こったことか、関係する人は誰か、どんなことが起こったか、どのような行動をとったかを、他の人が読んでも分かるように客観的に書く。たとえば「仕事中に、オフィスで、ミスを起こしてしまいそのことを上司に報告し謝罪した」といったものだ。

次に「思考・考え」(認知)を記入

そのときに浮かんだ思考・考えを記入する。大抵は「自動思考」と呼ばれる、状況に反応して自動的・直感的に考えたことだろう。いくつかのパターンをあげてみよう。

(1)根拠のない決めつけ: 証拠が少ないままに思いつき信じ込む
(2)白黒思考: 物事をすべて白か黒かという極端に捉える
(3)部分的焦点づけ: 自分が着目していることだけに目を向け、短絡的に結論付ける
(4)過大・過小評価: 自分が関心あることには拡大して捉え、逆に自分の考えが合わない部分は縮小に評価する
(5)べき思考: 「こうするべきだ」「あのようにすべきではなかった」と過去のことを制限して決め付ける
(6)極端な一般化: 少数の事実を取り上げて、すべてのことが同様の結果になるだろうと結論づけてしまう
(7)自己関連付け: 何かが起きると、自分のせいで起こったのだと自分を責めてしまう
(8)情緒的な理由づけ: 自分の感情だけで現実を見てしまう

たとえば「自分は駄目なやつだと思われているに違いない」「自分の評価は下がったに違いない」「もう仕事をまかせてもらえないだろう」--といったものだ。

そして「気分・感情」についても書き込む

そのときの「気分・感情」をワンフレーズで記入する。いくつかの気分や感情が浮かんだ場合は、最も強く感じたものにマークをつける。たとえば「落ち込む、自責、不安、心配、おびえ」などが考えられる。

その上で「身体的な反応」について記入

ストレスを感じたときの自分の特徴的な反応を書く。これはストレスを感じたことを身体的な反応で自覚するためだ。ここでは「緊張」「心臓がドキドキする」「胃が痛くなる」などだろう。

ここまで書いた「考え方(認知)」「気分・感情」「身体反応」と「行動」は相互に作用しつながっているので、これらをよく見て現在の自分の状態を見ておこう。

「根拠」は自動思考を裏付ける事実を書く

「思考・考え」が浮かんだ「根拠」を考えて記入する。あくまでも自動思考を裏付ける事実だけを書き出す。想像や思い込みは避けるようする。たとえば、「上司から『以前にも同じミスをした』と言われた」というものだ。

このような考え方で終わると、ネガティブな考えの悪循環(自動思考)に陥ってしまう。堂々巡りをして、結局は「上司に嫌われた。もう終わりだ」という考えを強めてしまい、さらにストレスが大きくなってしまう。

「反証」は逆の事実、自動思考と矛盾する事実を書く

「根拠」とは逆の事実、自動思考と矛盾する事実を探し出して書き出す。今回の例では、「今回のことだけで上司からの評価が下がってしまったとは言い切れない。また、この仕事は自分に任せてもらえないと言われたわけではない。今の時点では、これらはあくまでも自分の想像だ」というものが考えられる。

「別の見方・考え方」(適応的思考)を考える

今度は、「根拠」と「反証」をもとにして、「別の考え方」(適応的思考)ができないかを考える。自動思考の飽く順から抜け出し、柔軟な考え方と視野を広げることを意識するといい。Aさんの例では、「たしかにミスはしたが、だからと言って自分の全てが駄目だということではない。同じミスを繰り返さないための改善策を考える。ダブルチェックなど。その改善策を上司に報告して引き続き頑張る気持ちを伝えよう」といったものが考えられる。

ストレスに上手に対処するために

ストレスを感じたとき、私たちはそのストレスにうまく対処できるように、このような認知や行動の修正を無意識のうちに行っている。

だが強いストレスを感じると否定的な考えがぐるぐると浮かんできてそこから抜け出せなってしまうことがある。認知行動療法の一種であるコラム法を使うと、専門的な知識やテクニックがなくても、自分に起こった物事を客観的に捉えて、認知や行動の修正を自分で行える。これを用いることで以下の4点のことができるようになる。

(1) 頭の中が整理される
(2) 自分の考え方の問題点や別の柔軟な考え方を客観的に理解できる
(3) 問題点がはっきりするので、対処の仕方も楽になる
(4) 延々と否定的な考え(自動思考)が浮かぶのを止めることができる

コツは、少しでも気になったことがあれば気軽な気持ちで試してみることだ。同じトピックでも繰り返して書いているうちに、今までになかった別の見方や考え方ができることもある。自転車の練習のように、繰り返し練習してみるといい。慣れてくるとあまり意識しなくてもより気軽に、簡単にできるようになるだろう。

忙しく処理する仕事が多く、またそれによる人間関係で不調に陥ることは誰にでもあるだろう。メンタルヘルスを保つとは誰にでも必要だ。そのためにもこのようなスキルを身につけて、ストレスを溜め込まないようにしよう。(ZUU online 編集部)

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