地銀再編
(写真=PIXTA)

地銀の再編が止まらなくなっている

地銀の再編成や統合の動きが活発化しています。

2014年10月の東京都民銀行(東京都)と八千代銀行(東京都)の経営統合を皮切りに、その翌月の2014年11月には地銀最大手の横浜銀行(神奈川県)と東日本銀行(東京都)が経営統合の基本合意を発表しました。同月には九州で県内トップバンク同士の肥後銀行(熊本県)と鹿児島銀行(鹿児島県)が経営統合を発表し、2015年10月には金融持ち株会社である九州フィナンシャルグループ(鹿児島県)を設立しています。

2015年9月には、香川銀行(香川県)と徳島銀行(徳島県)を傘下に置くトモニホールディングス(香川県)と、三菱UFJフィナンシャルグループ系列で大阪府を地盤とする大正銀行(大阪府)が、2016年4月1日に経営統合することを発表しました。

11月には茨城県を地盤とする地銀の常陽銀行と栃木県の足利銀行を傘下に置く足利ホールディングス(栃木県)が2016年10月をめどに経営統合することで基本合意しました。

また肥後・鹿児島連合の誕生により、総資産規模で九州第2位の座を明け渡した西日本シティ銀行(福岡県)も、再編先を模索中ともいわれており、再編の話題が出ていない、大分県の大分銀行や宮崎県の宮崎銀行など、九州東部エリアの地銀の動向と合わせて注目が集まっています。このように今、地銀の再編が、急速に進んでいます。

地銀の再編・統合が進むのは、事業の広域展開を目指す新たなる戦略

このような再編の動きの目的は、地方は人口減少などで決して順風な環境ではありませんが、地域経済を支える金融機関として、個人や法人により幅広い金融サービスを提供するために業務や資本の基盤を拡大して、広域展開を可能にすることです。

地銀が経営統合する場合、共同で持ち株会社を作ってその傘下にそれぞれグループ銀行を置くという形が今まで多く見られ、今後もこのスタイルが主流になると考えられています。持ち株会社を利用して、システムや間接部門などを共通にすれば人員や経費を抑えることができるので、新規の取引先の創出に人手や資金を投じる余裕も生まれてくるのです。

地銀のメインの取引先は、地域の中小企業です。昨今、その中小企業の多くが、経営が順調でも後継者難のために事業を止むを得ず売却する動きが目立っています。また個人の利用者からは高齢化社会を反映し、相続に関するアドバイスや財産管理の依頼などといったサービスを求める声が強まっています。これは貸し出しで収益を確保する今までの伝統的な銀行業務の範疇を越えた新しいニーズです。

地銀の再編のメリットとして、地銀同士の情報交換・共有が活発になることが挙げられます。その先駆けとして、福岡銀行(福岡県)、北海道銀行(北海道)、七十七銀行(宮城県)、千葉銀行(千葉県)、八十二銀行(長野県)、静岡銀行(静岡県)、京都銀行(京都府)、広島銀行(広島県)、伊予銀行(愛媛県)のそれぞれの地域で預金量トップクラスの地銀が集まって、その名も「地域再生・活性化ネットワーク」というグループを結成しています。そこで取引先の中小企業を広域で結びつけるために合同商談会や協調融資を行っています。

「地域再生・活性化ネットワーク」のメンバーである八十二銀行は、長野県内に本店を有するすべての地域金融機関と「ALL信州観光活性化ファンド」を2015年3月に創設しました。これは県内の観光地に賑わいを持たせるための「観光まちづくりモデル」の構築と観光産業の発展に向けた取り組みを目的としています。

これら以外にも、日本政策投資銀行が中国銀行(岡山県)、山口銀行(山口県)、阿波銀行(徳島県)、広島銀行などと観光活性化に関する協定を結んだりしています。

地銀再編
(写真=PIXTA)

地銀再編を株式市場はどう見るか

前述した肥後銀行と鹿児島銀行が、経営統合の基本合意した際には、鹿児島銀行の株価は約4%上昇しました。同じく前述した三菱UFJフィナンシャル・グループ系列の大正銀行がトモニホールディングスの傘下に入ることが、2015年4月に明らかになった際には、「メガ銀行系列の地銀の再編が進む」との連想からみずほ銀行が筆頭株主の千葉興業銀行(千葉県)の株価が上昇しました。このように地銀の再編の動きは、過去の例を見るかぎり株式市場からは好材料とみられています。

地銀の統合によって、私たちの生活にどんな影響が出るのか

肥後銀行と鹿児島銀行は、両銀行間の振込手数料を引き下げました。これは統合によって同じ銀行として取り扱われるようになったためです。

さらに、統合により地銀の経営体質が強化され、コスト削減との相乗効果から、例えば地域企業への融資基準が緩和され、地域経済の活性化に繋がることも考えられます。

かつて都市銀行の再編によりメガバンクが誕生したことで、都市銀行利用者の利便性が高まった時と同じように、再編をきっかけに地方銀行の顧客サービスが向上し、利用者の利便性が高まると考えられています。その他にも、地方銀行の事業分野が広がることで人材の受け皿が拡大し、地域だけでなく首都圏などからの人材流入にも繋がるでしょう。

地方銀行同士の交流から、周辺地域を超えた地元企業の活躍をきっかけに地域の活性化も期待されているのです。(提供: nezas

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