◎日本の輸入関連銘柄

国内牛肉市場において、豪州は最大の輸入相手国です。日本の輸入牛肉のシェアは、牛海綿状脳症(BSE)の影響による米国産牛肉の禁輸措置(2003年12月~2005年12月)をとるまで、米国産と豪州産がほぼ半分ずつであったのですが、禁輸措置期間に豪州産が90%のシェアを取った後、禁輸措置解除後に米国産牛肉の輸入が増え始め、豪州産のシェアが下がり、再び、フィフティ・フィフティのシェアに回帰しつつあります。日豪EPAの大筋合意により、競争条件が米国産牛肉に不利、豪州産牛肉に有利となることで、豪州産牛肉のシェアが再び拡大する可能性があります。

冷凍牛肉を18年間かけて38.5%から19.5%まで、冷蔵牛肉を15年かけて38.5%から23.5%まで段階的に関税率を削減することとしていますが、初年度に関税率を、冷凍牛肉8%、冷蔵牛肉6%引下げの予定ですので、初年度ドラスティックに、その後、徐々にじわりじわりと豪州産牛肉が安くなっていくことが期待されます。そのため、豪州産牛肉を使用する企業にとっては、コスト削減となり、収益の改善が期待されます。関連銘柄は以下となります。

日本マクドナルドホールディングス< 2702 >
ハンバーガー用の牛肉の多くは、豪州産を採用しています。

ゼンショーホールディングス< 7550 >
「すき屋」「なか卯」で、豪州産牛肉を使用した牛丼を提供しています。

日本ハム< 2282 >
豪州で大規模農場を展開し、豪州で生産する牛肉は、現地販売のみならず、アジア各国、日本に輸出しています。

ペッパーフードサービス< 3053 >
ステーキのファストフード店「ペッパーランチ」で、豪州産牛肉を提供していいます。

物語コーポレーション< 3097 >
焼肉食べ放題店「焼肉きんぐ」で、豪州産牛肉を提供しています。

S Foods< 2292 >
豪州産牛肉ブランド「Naruo牧場」を販売しています。

上記のとおり、日豪EPA関連銘柄として、日本の輸出関連で自動車メーカーを、日本の輸入関連で豪州産牛肉に関係する企業をご紹介しました。

日豪EPA大筋合意により、豪州市場へのアクセスが格段に改善し、我が国自動車メーカーのメリットが大きいものと思われます。一方、日本市場へのアクセスの改善においては、消費者として安い豪州産牛肉を食べられるというメリットがありますが、国内肉用牛経営者には大きな影響があるものと考えられます。

農林水産大臣は、日豪EPAの大筋合意を受けて、「生産者の皆様が引き続き意欲をもって経営を続けられるよう、肉用牛経営をはじめとする農畜産業について、構造改革や生産性の向上による競争力の強化を推進してまいります。」という談話を公表していますが、構造改革や生産性の向上による競争力の強化を進める国内企業も、有望な投資対象になるものと考えられます。

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BY RUDISHA 金融・経済分野専門のライターをやっています。

photo:Bovine curiosity / soham_pablo