実質成長率は2015年度0.7%、2016年度1.2%、2017年度0.0%
◆2015年度の成長率見通しを上方修正
2015年10-12月期のGDP2次速報を受けて、2/16に発表した経済見通しを改定した。実質GDP成長率は2015年度が0.7%、2016年度が1.2%、2017年度が0.0%と予想する(2/16時点ではそれぞれ0.6%、1.2%、0.0%)。2015年10-12月期の成長率が上方修正されたことを受けて2015年度の見通しを0.1%上方修正した。
2016年1-3月期は民間消費が増加に転じることなどから前期比年率0.8%のプラス成長を予想しているが、GDP統計では季節調整をかける際にうるう年調整が行われていないことに注意が必要だ。
当研究所では1-3月期の民間消費はうるう年に伴う日数増で前期比0.4%程度押し上げられる(GDPは前期比0.2%強、前期比年率1%程度)と試算している。1-3月期はうるう年の影響を除けばほぼゼロ成長で、景気が回復基調に戻るのは2016年度入り後までずれ込みそうだ。
2016年前半は年率1%以下の低成長にとどまるが、2016年度後半は2017年4月に予定されている消費税率引き上げ(8%→10%)前の駆け込み需要によって成長率が高まることが予想される。2017年度は駆け込み需要の反動と消費税率引き上げに伴う実質所得低下の影響からゼロ成長となるだろう。
なお、当研究所では2017年4月の消費税率引き上げ前後の駆け込み需要とその反動の規模を実質GDP比で0.3%程度と試算しており、前回(2014年4月)の0.6%程度(当研究所の試算値)よりも小さくなることを想定している、
これは税率の引き上げ幅が前回よりも小さいこと、駆け込み需要が発生しやすい住宅、自動車など買い替えサイクルの長い高額品については、前回の税率引き上げ時にすでに前倒しで購入されている割合が高いこと、食品(酒類、外食を除く)などに軽減税率が導入されたこと、などによる。
また、2017年4月の消費税率引き上げによって消費者物価(生鮮食品を除く総合)は1.0%押し上げられると試算される(軽減税率導入の影響も含む)。2014年度に比べて税率の引き上げ幅が小さいこと、軽減税率によって物価の押し上げ幅が縮小することから、消費者物価上昇率への影響は2014年度(2.0%)の半分程度となろう。
設備投資は2015年7-9月期の前期比0.7%から10-12月期には同1.5%へと伸びを高めたが、これは企業収益が好調だった時期に計画された設備投資がようやく実施されたことを反映した動きと考えられる。
2/26に内閣府から公表された「企業行動アンケート調査(2015年度)」によれば、今後5年間の実質経済成長率見通し(いわゆる期待成長率)は1.1%となり、前年度から0.3ポイント低下した。
企業の設備投資意欲を示す「設備投資/キャッシュフロー比率」は期待成長率との連動性が高いため、先行きも企業の投資意欲が大きく高まることは見込めない。設備投資は企業収益の悪化を受けていったん減速する可能性が高く、景気の牽引役となることは当分期待できないだろう。
一方、個人消費は消費税率引き上げから2年近くにわたって低迷が続いているが、先行きは持ち直しに向かうことが見込まれる。2016年度の春闘賃上げ率は前年度を下回る公算が大きい(当研究所では2016年度の春闘賃上げ率を前年から0.08ポイント低下の2.30%と予想)が、原油価格下落に伴う消費者物価の低下が実質購買力を押し上げるためである。
名目雇用者報酬の伸びは頭打ちとなるが、実質雇用者報酬は2015年度が前年比1.4%、2016年度が同1.3%と1%台の伸びを確保し、個人消費の持ち直しに寄与することが予想される。
ただし、2017年度は原油価格の持ち直しや消費税率引き上げの影響から消費者物価上昇率が2%程度まで上昇するため、2014年度と同様に実質雇用者報酬の伸びは大きく低下する可能性が高い。2017年度の個人消費は消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動と物価上昇に伴う実質所得低下の影響が重なることから、大幅な減少となることが避けられないだろう。