◆物価の見通し

消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は、原油価格下落に伴うエネルギー価格の低下を主因として2015年8月から10月まで3ヵ月連続で前年比▲0.1%となった後、11月、12月が前年比0.1%、2016年1月が同0.0%とマイナスを脱した。しかし、先行指標である東京都区部のコアCPIは2016年1月、2月と前年比▲0.1%となっており、全国のコアCPIも2015年度末までに再びマイナスとなる可能性が高い。

エネルギー価格の前年比下落率は2015年9月をピークに縮小傾向となっていたが、電気代、ガス代は原油価格下落の影響が遅れて反映されるため、下落ペースは今後加速する公算が大きい。

消費者物価指数の調査対象品目を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、上昇品目数の割合が7割近くなっており、引き続きエネルギー以外の物価上昇圧力は強い。

しかし、2016年夏頃にかけてのエネルギー価格の下落率は2015年夏頃よりも大きくなるため、先行きのコアCPIの下落幅は2015年8月から10月までの前年比▲0.1%を明確に上回る可能性が高い。コアCPI上昇率が再びプラスに転じるのは原油価格下落の影響が一巡する2016年10-12月期までずれ込むだろう。

2016年度末にかけては消費税率引き上げ前の駆け込み需要によって需給バランスが改善することもあり、コアCPIはいったん1%程度まで伸びを高めるが、2017年度入り後は消費税率引き上げに伴う景気減速によって需給面からの物価上昇圧力が弱まるため、2%に達する前に上昇率は鈍化し始めるだろう。

コアCPI上昇率は2015年度が前年比0.0%、2016年度が同0.2%、2017年度が同0.9%(消費税率引き上げの影響を除く)と予想する。

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斎藤太郎(さいとうたろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長

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