これから資産運用を始めるなら、賢く活用したい制度がある。それが、老後に備えた資産形成ができるiDeCo (個人型確定拠出年金) と、投資の運用収益が非課税になるNISA (少額投資非課税制度) の2つだ。それぞれ制度内容や使い方が異なるので、資産形成の目的に合わせて上手に使い分けたい。

利益は非課税、さらに掛金の全額が所得控除の対象となるiDeCo

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(画像=(写真=PIXTA))

近年、注目を集めている商品に確定拠出年金法に基づいて実施されるiDeCo (イデコ、個人型確定拠出年金) がある。

iDeCoは、老後のために掛金を積み立て、自らが選んだ方法で運用していく制度だ。2016年に一部法改正が行われ、翌2017年に対象範囲が拡大されて以降、加入者数を大きく伸ばしている。国民年金基金連合会によれば、2017年8月時点での新規加入者等の人数は197万601人で、これは対前年同期比の641.6%にも昇る。積み立てたお金の全額が所得控除として課税所得から差し引かれるため、支払う税金を軽減できる点が注目されている。

例えば、課税所得が700万円の40歳会社員が毎月2万3,000円を積み立てた場合、所得税と住民税合わせて毎年8万4,300円も軽減される。20年間受け続ければ168.6万円も節税できる計算だ。

加えて、iDeCoでは運用益が非課税だ。本来、資産運用の利益には20.315%が課税され手元に残るのは79.685%分だが、iDeCoでは運用益がすべて再投資されるので、複利効果が大きくなる。老後の受け取り時は原則課税されるが、退職所得控除と公的年金等控除の対象となるので、税金がかからずに受け取れる場合もある。

3つの種類があるNISA

一方、NISAはiDeCoのような所得控除はない。しかし、制度上NISA口座内で購入した金融商品から得られる利益がすべて非課税になる。なお、一般のNISAと、2018年からスタートしたつみたてNISAのいずれかを選んで利用することができる。また、未成年者を対象としたジュニアNISAも含めると3種類のNISAが存在する。

一般のNISAは年間120万円までの非課税投資枠内で購入した株式や投資信託等の運用益が5年間非課税になるので、まとまった資金がある人や値上がりしそうな個別株等を選んで投資したい人に向いている。

つみたてNISAは毎月一定額の積み立て投資で購入した投資信託などの運用益が非課税になる制度で、年間40万円の投資を20年間続けることができる。そのため、時間を分散して投資をしたい人に向いている制度だろう。

未成年向けの「ジュニアNISA」は年間80万円までの非課税投資枠が設定され、5年間利用できる。子どもの教育費形成が目的のため、18歳になる年度の12月までは払い出しが制限されることには注意が必要だ。

老後資金はiDeCo、現役時代に使うお金はNISAで

いずれも、証券会社の総合取引口座や銀行の預金口座で預金をするよりもお得な制度だが、どのように使い分ければよいだろうか。

税制優遇面では所得控除の対象となるiDeCoが有利になる。ただ、iDeCoはあくまで老後のための「自分年金づくり」の制度であることを忘れてはいけない。iDeCoは原則60歳になるまで換金することができない。老後の資産形成が目的ならiDeCoを優先して利用するのが賢い選択だが、会社のリタイア前に使う可能性がある資金を投じるべきではないだろう。

一方、現役時代に使う可能性がある資金は、NISAに入れておくのが一案だ。特に2018年にスタートしたつみたてNISAは、まとまった資金がなくても少額で投資が始められるうえ、20年という長期で続けることができるので、働いている世代の資産形成にとっても利便性が高い。

加えて、投資対象も金融庁が規定した条件をクリアしたETF (上場投資信託) や投資信託に限られており、資金が必要なタイミングで自由に売却し、引き出すことができる。ただし、NISAもつみたてNISAもマル優のように一旦売却しても非課税投資枠が増えるわけではないので注意が必要だ。

iDeCoやつみたてNISAなどを使った積み立て投資を成功させる最大のポイントは、最低10年は続けるつもりで始めることだ。例えば、10年の投資期間の間にはリーマンショックのように大きく下落することもあれば、現在のように日経平均が2万4,000円を超えるような好相場を迎えることもある。長く積立をすることで、価格が平準化され、価格のぶれ幅が安定してくるため、相場の動きに一喜一憂せずに構えることも可能だ。

ただし、金融市場は上方向にも下方向にも変動するので、お金が必要な時期と下落相場が重なると、元本割れした状態で換金しなければならない事態も起こりうる。うまく利益が出たタイミングを選んで換金できるよう、「待てるお金」を投じることが重要だ。

子どもの進学資金など、10年以内に使うタイミングが訪れることが分かっているお金は、目減りさせないことを優先して銀行預金に入れておくなど、資金使途にあわせてお金の置き場所を検討することが重要になる。

ジュニアNISAは余裕がある場合の選択肢

子どもがいるなら、未成年用のジュニアNISAも選択肢に入る。ただし、ジュニアNISAは子ども本人が18歳になる年度の12月までは換金できないことから、子どもの大学費用などを始めとした子どもの将来を願って資産形成をするものだという意識をもつのがよいかもしれない。ジュニアNISAが換金できない期間が長いと感じるのであれば、親のNISA枠を優先して活用し、余裕ができた段階で子ども名義のジュニアNISAを活用するのも一案だ。

投資信託や株式をNISA口座内で売却して利益を確定することはできるため、進学の時期が近づいたときに大きな利益が出ていれば、そのタイミングを狙って利益確定することも重要になる。

ここまで見てきたように、老後の資金はiDeCo、さらに余裕がある場合や現役時代に使う可能性があるお金はNISAを利用するなど、お金の置き場所を使い分けるのが効果的だ。いずれも有利に投資ができる制度なので、積極的に活用し賢い資産形成を目指したい。(提供:大和ネクスト銀行


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