2021年4月、ビットコインの価格が一時700万円を超えた。一般的に使用されている「仮想通貨」の呼称を金融庁が2020年5月より「暗号資産」へと正式に変更するなど、資金決済法や金融商品取引法を中心にビットコインに代表される仮想通貨の法整備が進められている。
税法については他の投資手段と異なる税計算の方法が採用されているのが現状だ。株式投資などを経て仮想通貨を始めた人からは、「税金が高い」といった不満の声が上がっているようだ。
※この記事では一般的に呼称されている「仮想通貨」と表記する。
仮想通貨の税務
仮想通貨の税計算を理解するためのポイントは2つある。1つは仮想通貨の何が課税所得になるのか、もう1つはその課税所得からどのように所得税が計算されるのかである。
ポイント1. 仮想通貨の課税所得になるものとは
仮想通貨の課税所得になるのは、仮想通貨の売却・交換・支払い使用時の利益である。いずれも、銘柄ごとに以下の方法で計算する。
収入金額- (取得価額+その他必要経費)
「収入金額」とは、受け取った金銭や、他の仮想通貨に交換した場合は交換後の仮想通貨の時価、物やサービスの価格 (税込み) のことだ。
「取得価額」とは、売却や交換等で払い出した仮想通貨の原価を指す。売買・交換にかかった手数料を含め、銘柄ごとに総平均法または移動平均法を継続的に適用して計算する。
総平均法と移動平均法の違いは、「平均単価」を計算する過程にある。
総平均法は、1年間の取得価額の総額から平均単価を算出する。これに対し、移動平均法は購入のたびに平均単価を算出する。
いずれの方法も、銘柄ごとに以下の流れで計算する。
・銘柄ごとの「平均単価」を計算
・「平均単価」から、12月31日時点で手元に残っている仮想通貨を評価
・評価額を「前年からの引き継ぎ分+年内の購入価額」から差し引く
最後については少しわかりにくい部分もあるが、残った仮想通貨から年内に払い出した仮想通貨の取得原価を逆算している。すなわち、事業者の「棚卸し」と同じだ。
「その他必要経費」は、仮想通貨の取引に使用したインターネットやスマートフォンなどの回線利用料やパソコンなどの端末、書籍などが考えられる。ただし、業務部分しか経費にならなず、私的な利用を含むものは対象外となる。したがって、業務利用部分を明確かつ合理的に区別する方法を考える必要がある。
ポイント2. 課税所得からどのように所得税が計算されるのか
所得税の計算方法
所得税額は、以下の方法で計算される。
(各種所得の合計-所得控除) ×所得税率-税額控除=所得税額
・各種所得の合計:10種類ある各所得を合計する
・所得控除:社会保険料控除や基礎控除などを差し引く
・所得税率:5~45%の超過累進税率 (所得額の高い部分に高い税率が適用される仕組み)
下記参照
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
・税額控除:住宅ローン控除など
最後に、給与から徴収された源泉所得税などがあれば、納税額から差し引く。つまり、1年を終えて給与、個人事業や不動産賃貸などで得た収入などがすべて揃わなければ、税額が確定しない。
仮想通貨は、原則として10種類の所得のうち「雑所得」にあたるがレアケースである。想通貨取引同士の損益は通算できるが、他の所得との通算はできない。
納税資金の確保に注意
仮想通貨は、納税資金の確保に注意が必要である。たとえば、年初に仮想通貨を売却して利益を得たとする。それを元手に年内に再び投資したところ、思うように価格が上がらず売却できなかったとしよう。
この場合、手元に資金がないにもかかわらず、年初の売却益によって発生した所得税を納めなければならない。所得税の納期限は、翌年の3月15日。振替納税の手続きをしても、4月下旬だ。6月には住民税の徴収も始まる。住民税は課税所得の10%であり、こちらもかなり負担が大きい。
利益が確定したら、少なくとも利益の20%は納税のために残しておいたほうが賢明だ。
仮想通貨の税金は払わないとばれる
「それなら確定申告をせずに黙っていればよい」と思う人もいるかもしれないが、それは絶対にやめてほしい。税務署は個人の財産に関するさまざまな情報を持っているし、それに関する調査権限もある。情報と合わないものがあれば、本人だけでなくその取引先も調査する。
また令和2年度税制改正で、暗号資産デリバティブ取引 (仮想通貨の証拠金取引) が支払調書の提出対象になった。
支払調書とは、業者から個人などに対する支払いが行われた場合、誰にいくら支払ったのかを税務書に知らせるための書類のことだ。
現在、仮想通貨交換所のホームページで、マイナンバーを提出するようアナウンスしているのは、この税制改正によるものだ。
支払調書を提出するのは令和3年分からで、これによって税務署が仮想通貨に関する情報を入手しやすくなったといえる。もちろん現物取引であっても、税務署が取引所に確認すればいつでも調査できるものであることを忘れてはならない。
発覚した場合は加算税の対象に
では、所得税の申告をしていないことが税務署にばれたらどうなるのか。
未納税額を支払うだけでは済まず、「未納税額×5~15%」の無申告加算税が追加で発生する。過去にも加算税を課されたことがあれば25%、また今回の違反が悪質であれば無申告加算税が重加算税に代わり、50%になる。つまり、元の税額の1.5倍になるということだ。
超過累進税率が適用される仮想通貨は株式投資とは異なり、短期間に大きな利益を出すほど税負担が重くなる。
そこに加算税や延滞税が加われば、きちんと確定申告をした場合と比べて手元に残るキャッシュが大幅に減ってしまう。
これまで明確に示されていなかった税金についても、税制改正で定められた仮想通貨の税金は、必ず納めるようにしよう。
(提供:大和ネクスト銀行)
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