皆さんは自分の老後に必要な資金を考えたことがあるだろうか。漠然と不安に感じていても、実額を把握しそれに備えた資金計画を立てている人は多くないように思える。では、実際にどれだけ必要で、そのために今からどうすればよいか考えていくことにしよう。
資産形成のポイント:老後の生活費を知ること
まず、老後の生活費だが、生命保険文化センターの「生活保障に関する調査 (平成25年度) 」によると、夫婦2人世帯の平均で、ひと月当たり最低でも22万円必要だという。この「最低」という意味は、かろうじて食べていける水準で、レジャーや趣味などにかかる費用は含まれていない。「ゆとりある生活」を送るには平均で35.4万円欲しいというのが同調査の結果だ。
実際に必要な額を計算してみよう。会社勤務の人が65歳で引退する場合、日本人男性の平均寿命ほぼ80歳までの15年間、つまり180ヶ月分の蓄えが必要になる。これに上記金額を掛け合わせると最低限の生活費は3,960万円、ゆとりを持ちたいなら6,372万円と、かなりの高額になる。
年金がある、と思われるかも知れないが、総務省統計局の家計調査報告によると現在の支給額でも2人世帯で毎月約6万円の赤字になる状況である。1,080万円 (6万円 × 180ヶ月) の蓄えがあればかろうじて暮らしていける計算だが、思い通りにはいかないものだ。
資産形成のポイント:年金だけでは毎月6万円の赤字
理由は二つある。一つは、年金支給額は減ることはあっても増えることはまず考えられないことだ。2017年4月に予定される消費税増税は、そもそも社会保障費を補うために行うものだが、それでも将来の負担はまだ軽減されない状態だ。今後、増税と年金支給削減が続くのは目に見えている。
もう一つのマイナス要因はインフレである。政府・日銀は2%目標の達成に躍起になっているが、仮に現状並みの1%の物価上昇 (除 生鮮食品、エネルギー) で収まるにしても、現在30歳の人の場合、上述の不足額1,080万円は簡易計算で約1,650万円、ゆとりある老後生活を望むなら5,300万円以上に跳ね上がる。
資産形成のポイント:ゆとりある老後には5,300万円必要
今後、賃金がどれだけ上がるか不透明だ。なるべく早い段階から資金計画を立てておくのが賢明だろう。上述のように現在30歳の人が5,300万円を蓄えるには単純に毎月13万円近い貯金が必要だが、これはかなり厳しいだろう。そうなると資産運用で増やしたいところだが、日銀のマイナス金利導入で定期預金でさえほぼゼロ金利になっている。預金以外の手だてを考える必要があるのだ。
一般個人が利用できる運用手段には、株や債券などの個別有価証券、一般投資信託やETF (上場投資信託) 、REIT (不動産投資信託) などの投信、金や不動産といった実物資産、為替 (FX) 取引等が考えられるが、老後への備えとなると、大きなリスクを冒すわけにもいかない。
資産形成のポイント:超低金利下ではETF、REIT、不動産が有効
手数料など運用コストを考えると、消去法で残るのはETF、REIT、不動産といったところだろうか。ETFは国内外の株価・REITインデックスや、金、原油などのコモディティー、さらに海外債券に投資するものなど多様な選択肢があり、その投資単価も数千円から10数万円と比較的手頃なため、同じ投資額でもリスクを広く分散できる利点がある。
また、内外のREITは不動産賃貸収入が分配金やファンド拡大の原資となるため、対象市場が成長するのであればよほど高値で掴まない限り、安定した成果が期待できる。人口減少で市場縮小が必至の国内市場でも、例えばインバウンド需要の恩恵を受けるホテル、人口集中が進む都心のマンションやオフィスビル主体のREITであれば有望銘柄と言えるだろう。
不動産は個別物件を丸々買うには多額の資金が必要だが、最近では1口1万円などで資金を募る不動産特化型クラウド・ファンディングが登場、これはという投資物件があれば有効かも知れない。
いずれもリスクはあるが、今や預貯金もマイナス金利拡大のリスクを抱える時代。多少リスクがあってもカバーできるリターンを得られるものや、ミドルリスク・ミドルリターンであれば一般個人の運用候補に入れたいところだ。
資産形成のポイント:今や預貯金もリスク資産に
先のインフレ込みの必要最低額1,650万円を30年後に実現するとすれば、年平均運用利回りが1%なら毎月4万円、3%なら2.9万円程度を投資に回す必要がある。自分のリスク許容度を考え、財布の中身と相談しながら運用対象を選びたい。
老後への備えは息の長い運用になる。時間を味方につけるという考え方も重要だ。その点で注目に値するのは原油などコモディティーに投資するETF。足元では世界経済の先行き不安を反映して原油は12年来の安値、金を除くコモディティーの多くも価格が急落している。
しかし今後、新興国の人口が増え、その中間層の拡大が続くとすれば、太陽光発電など新エネルギーの台頭を考慮しても原油価格が下がり続けるとは考えにくい。決まった金額を一定期間毎に投資を続けるドルコスト平均法を活用すれば老後資金の助けになりそうだ。
(提供:
大和ネクスト銀行
)
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