国内不動産取得動向,海外資金
(写真=PIXTA)

不動産取引額の縮小

2015年を振り返ると、上期には力強い株価上昇が続き、不動産投資市場においても大規模な取得事例が目立った。しかし、8月の上海株の急落を契機に新興国経済の失速懸念が高まり、それ以降、株式市場に止まらず、世界中の様々な金融市場でリスク回避の動きが支配的となった。

こうした中、2015年の日本国内の不動産取引額は、4年ぶりの縮小となった。米Real Capital Analytics によると、1千万ドル以上の日本国内の不動産取引の合計額は、424億米ドルと前年から約2割の縮小であった(*1)(図表-1)。

依然として高い水準にあるものの、2014年まで続いた不動産取引の拡大(*2)は一旦途絶えたといえる。さらに、スポンサー企業からの内部取得が多いJ-REITの取得額がほぼ横ばいであったことから(図表-2)、仲介会社の媒介や入札などによる開かれた投資市場の縮小が顕著であったとみられる。

金融市場でのリスク回避の動きを受け、不動産投資市場でも積極的に買い付ける動きが減退したとみられ、また、一定の利回りを見込める他の投資対象も乏しいため、あえて賃貸市況の改善が続く不動産を売り急ぐ動きも増えず、結果的に不動産取引額が縮小したと考えられる。

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海外資金による取得額の縮小

最大の不動産投資主体であるJ-REITの陰で、様々な投資主体が取得額を縮小していたが、それらのなかでも、不動産価格変動の原動力になることが多い海外資金の動向は特に重要といわれる。

2015年の海外資金による日本国内の不動産取得額は、約7,700百万米ドルに止まり、大幅に増加した2014年から約3割の縮小となった(図表-3)。日本国内の不動産取引は全体的に縮小したが、なかでも、海外資金による取得額は世界的なリスク回避の動きを色濃く反映したといえる。

さらに、半期でみると、リスク回避の動きは2015年下期に明確であった。2015年上期の取得額は前年を上回っていたものの、下期の取得額は、上期から大幅に拡大した2014年下期の5割にも満たなかった。近年、海外資金による日本国内の不動産取得は下期に拡大する傾向があったが、2015年は3年ぶりに下期に縮小した。

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ただし、2014年に加速した海外資金による取得拡大は一旦途絶えたものの、2015年の取得額は依然として2013年と同水準であり、2009年のように極端に海外資金の動きが失われたわけではない。

また、そもそも海外資金による取得件数が限定的なため、大規模な取引事例による個別の影響が大きい。たとえば、2014年には最大規模案件のGIC(シンガポール政府投資公社)によるパシフィックセンチュリープレイス取得が約1,700百万米ドルにも及んだのに対し、2015年ではCIC(中国投資有限責任公司)による目黒雅叙園取得が約1,170百万米ドルに止まった。これら2件で約530百万米ドルの縮小が説明される点に注意したい。