アジア・新興国,インド経済,経済見通し
(写真=PIXTA)

要旨

  • 東南アジア5カ国およびインド経済は、総じて底堅い成長が続いている。低インフレ環境による家計の実質所得の向上を受けて民間消費は堅調で、インフラ投資や景気刺激策といった財政支出の拡大も景気を支えている。もっとも輸出と民間投資は停滞しており、自律的回復に向けた動きは見られない。
  • 消費者物価上昇率は、昨年後半からはエネルギー価格の下落による物価の押下げ効果が低減し始めて上昇に転じている。先行きも上昇傾向が続くと見ているが、農業生産の回復による食料のインフレ圧力が後退するほか、米国の利上げペースの遅れによって新興国通貨の下落リスクは昨年対比で低下しており、物価上昇は緩やかなものとなりそうだ。
  • 金融政策は、資金流出を懸念して政策金利を据え置く新興国は昨年より増えているが、米国の金融引き締めが一層ペースダウンしたことを受けて、4-6月期にインドネシアとインドが利下げしている。年内はタイが景気下振れ懸念が高まる局面で利下げすると予想する。
  • 経済の先行きは、海外経済の伸び悩みで輸出の持ち直しが遅れるなか、年内に自律的な回復軌道に入ることはないだろうが、低インフレ環境と安定した雇用・所得環境が続くなかで個人消費を中心に底堅く推移すると見られる。また金融・財政政策も引き続き景気をサポートするだろう。

53165_ext_15_0