食料費の内訳の変化
◆若年単身勤労者世帯の男性の変化~「外食離れ」、家で料理・調理食品が増加。「アルコール離れ」も。
30歳未満の単身勤労者世帯の食料費の内訳について、まず、男性の変化を捉えていく。
男性の食料費に占める個別品目で多いものは、1989年のバブル期では、圧倒的に1位「外食」(3.1万円)であり、食料費の実に62.7%を占める(図表1・2)。以下、2位「賄い費」(3.8千円)、3位「調理食品」(3.3千円)、4位「飲料」(3.1千円)、5位「酒類」(2.1千円)と続く。なお、2位以下の各品目が食料費に占める割合は、いずれも1割に満たない。
2014年でも圧倒的に多いものは1位「外食」(1.7万円)だが、1989年と比べると、支出は半分程度に減り(△1.3万円、実質増減率は△54.1%)、食料費に占める割合も46.0%(△16.6%)へ低下している。
2位以下については、2位「調理食品」(6.6千円)、3位「飲料」(3.4千円)、4位「穀類」(2.4千円)、5位「菓子類」(1.8千円)と続く。1989年では上位5位までに「賄い費(*1)」と「酒類」が入っていたが、2014年ではこれらの代わりに「穀類」と「菓子類」が入っている。
個別品目の実質増減率を見ると、最も増加しているものは「油脂・調味料」(+285.6%)であり、大幅に増えている。このほか、「肉類」(+86.3%)、「穀類」(+82.5%)、「野菜・海草」(+72.4%)、「調理食品」(58.2%)も50%を超えて比較的大きく増加している。
一方、最も減少しているものは、「賄い費」を除くと、「外食」(△54.1%)であり、次いで「果物」(△50.8%)、「酒類」(△43.4%)の減少幅も比較的大きい。
つまり、30歳未満の単身勤労者世帯の男性では、調味料や食材、調理食品の支出が増えて、外食が減っており、外食を減らして、代わりに調味料や食材を買って家で料理をしたり、惣菜などを買って家で食べるようになっている様子がうかがえる。30歳未満の単身勤労者世帯の男性では、確かに「外食離れ」をしているようだ。
なお、「外食離れ」の背景には、(1)現在の若者は厳しい経済環境にあり、将来の収入増に対して明るい見通しも持ちにくい(*2)ため、節約志向が高いと考えられること、(2)近年の国民的な健康志向の高まり(*3)などが影響している可能性がある。これらのほか、(3)外食産業の変化も考えられるが、(3)については3節で述べたい。
なお、30歳未満の単身勤労者世帯の男性では、酒類や果物の支出が減っていることから、「アルコール離れ」や「フルーツ離れ」の様子もうかがえる。「アルコール離れ」については4節で再度触れるが、「フルーツ離れ」は国民的な課題のようだ。
農林水産省「果樹をめぐる情勢(平成28年4月作成版)」によれば、果実摂取量は70歳以上を除く全ての年代で10年前より減少している。果実を食べない理由は、買い置きできないことや価格、手間、食べる食品が他にあること等があがっている。
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(*1)「賄い費」の大幅減少については、「若年層の消費実態(2)」でも述べた通り、1989年調査では調査対象に下宿や賄い付き世帯居住者を含んでいたが、2014年調査では含んでいない影響がある。
(*2)久我尚子「若者は本当にお金がないのか?―統計データが語る意外な真実」(光文社新書、2014年6月)第5・6章等
(*3)例えば、厚生労働省「平成26年版厚生労働白書 健康長寿社会の実現に向けて~健康・予防元年~」より、特定保健用食品の市場規模の成長(10年間で倍増)や喫煙率の低下傾向等から、近年の国民の健康意識の高まりが指摘。
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