◆若年単身勤労者世帯の女性の変化~「外食離れ」のほか家での料理も減り、調理食品が増加。

次に、女性の変化を確認する。食料費の内訳を見ると、1989年のバブル期では、男性同様に1位「外食」(1.2万円)が目立つが、食料費に占める割合は男性ほど高くなく、39.0%にとどまる(図表1・2)。

以下、2位「調理食品」(3.1千円)、3位「菓子類」(2.6千円)、4位「野菜・海草」・「穀類」(いずれも2.1千円)と続く。2位以下の食料費に占める割合は、男性ではいずれも1割にも満たないが、女性では「調理食品」が1割を超えて比較的高い。

2014年でも女性で最も多いものは、1位「外食」(1.1万円)だが、1989年より支出が減っている(△1.5千円、実質増減率△28.2%)。しかし、女性では「外食」が食料費を占める割合(39.4%)は1989年と同様である。

2位以下については、2位「調理食品」(4.5千円)、3位「菓子類」(2.4千円)、4位「飲料」(1.9千円)、5位「穀類」(1.8千円)と続く。2014年では「野菜・海草」が上位から姿を消す一方、「飲料」が上位に入っている。

また、個別品目の実質増減率を見ると、男性ほどではないが女性でも、最も増加しているものは、「油脂・調味料」(+31.7%)である。このほか「調理食品」(+14.2%)や「飲料」(+6.9%)も増加している。

女性ではこの三品目を除くと、各種食材から外食まで幅広く減少している。最も減少しているものは、「賄い費」を除くと、「果物」(△75.1%)であり、次いで「魚介類」(△50.1%)、「野菜・海草」(△43.0%)、「肉類」(△35.6%)、「乳卵類」(△31.5%)、「外食」(△28.2%)、「菓子類」(△25.9%)の減少幅も比較的大きい。

このように、女性では調味料や調理食品の支出が増えて、各種食材や外食が減っている。女性でも男性同様に調味料は増えているが食材全般が減っているため、女性では家で料理をすることが減っていると考えた方が自然だろう。

つまり、現在の30歳未満の単身勤労者世帯の女性では、外食や家での料理を減らして、代わりに惣菜などを買って食べるようになっている様子がうかがえ、女性でも「外食離れ」をしているようだ。なお、女性が料理をする機会が減っている背景には、男性並みに働く女性が増えたことが考えられる。

なお、30歳未満の単身勤労者世帯の女性では、男性同様に「フルーツ離れ」の様子がうかがえるが、「アルコール離れ」の様子はさほど見られない。

◆若年単身勤労者世帯の男女差~外食は男性、食材は女性で多い。薄まる食料費内訳の男女差。

食料費の内訳について男女差を見ると、1989年では「外食」や「酒類」、「飲料」、「調理食品」など、食材以外の項目では、男性より女性の方が消費支出額も食料費に占める割合も大きい(図表4)。

しかし、2014年では食材の支出額や支出割合が男性では増えた項目が多く、女性では全体的に減った結果、「穀類」や「肉類」の支出額は男性が女性を上回るようになっている。また、その他の食材の支出額も全体的に男女差が小さくなっている(男女差の絶対値が小さくなっている)。

これは食料費に占める個別品目の割合を見ても同様である。また、男性の支出額の方が女性より多い品目については、「外食」や「酒類」で支出額や食料費に占める割合の男女差が縮小している。

食料費の内訳を眺めると、12品目(「賄い費」を除く)のうち10項目で男女差が縮小していることから、若年単身勤労者世帯では食料費の使い方の性差が薄まっている可能性がある。

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若年層の「外食離れ」の背景~節約・健康志向だけでなく、外食産業超過・価格下落の恩も。

これまでに見たように、30歳未満の単身勤労者世帯では男女とも外食費が減っている。この理由には、前述の通り、若者の節約志向や健康志向の影響が考えられるが、外食産業における変化も考慮すべきである。

バブル期から現在までを振り返ると、外食産業ではサービスが多様化し、価格競争が激化している。外食産業にはレストランや居酒屋、ファストフード、ファミリーレストラン、カフェなど、いくつかの業態が存在するが、バブル期から現在にかけて、それぞれにおいて食のジャンルや店舗形態が多様化している。

また、バブル崩壊以降、デフレ進行の中で価格競争は激化してきた。特に、ハンバーガーや牛丼といったファストフードでは、極限まで価格が引き下げられる施策もあった。また、価格を下げるだけでなく、無料のWi-Fiサービスの提供など、食以外の面でも付加価値を提供してきた。つまり、バブル期と比べて現在の若者は、低価格でも高品質、かつ多様な飲食サービスを楽しめる環境にある。

さらに、最近ではコンビニエンスストアでも、コーヒーやドーナッツをはじめとしたテイクアウト商品の充実化や、イートインスペースを設けるなどの取組みをしている。コンビニとファストフードの境界が曖昧になっており、外食の選択肢が増えている。

以上より、若年単身勤労者世帯で外食費が減っている理由は、若者の節約志向や健康志向によって、家で食事をする機会が増えたことだけでなく、現在では安価で高品質な外食サービスが増えたことも影響しているのではないだろうか。