若年層の飲酒状況~20代と中年男性で「アルコール離れ」、高齢男性と30代以上の女性で飲酒増。

ところで、若者の「アルコール離れ」については興味深い統計データがある。厚生労働省「国民健康・栄養調査」では、飲酒習慣率(*4)を見ているのだが、2003年から2014年にかけて、20代の男性は20.2%から10.0%へ、女性は7.0%から2.8%へと、いずれも半数以下に低下している(図表5)。

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2節で見た通り、30歳未満の単身勤労者世帯の「酒類」支出額をバブル期と現在で比べると、男性では減少していたが、女性では元々男性より支出が少ないためか(1989年で男性2,101円に対して女性510円)、さほど変化は見られなかった(実質増減率△1.2%)。一方で、飲酒習慣率は、20代の女性でも低下しており、やはり若年層では女性でも「アルコール離れ」をしている。

なお、男性では、30~50代でも飲酒習慣率が低下しており、「アルコール離れ」をしているのは20代だけではない。この理由としては、前項までにも触れたが、国民全体の健康志向の高まりなどが考えられる。特に中高年男性では、BMI25以上(肥満)に分類される割合が上昇しており(*5)、2008年に開始された「特定健康診査・特定保健指導」を懸念する層も拡大しているのだろう。

一方、飲酒習慣率が上昇しているのは、男性では60代以上、女性では30代以上である。つまり、今、飲酒が増えているのは、高齢男性と30代以上の女性のようだ。

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(*4)週に3日以上飲酒し、飲酒日1日あたり1合以上を飲酒すると回答した者の割合。
(*5)厚生労働省「国民健康・栄養調査」
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おわりに

本稿では、総務省「全国消費実態調査」における30歳未満の単身勤労者世帯の食費内訳の変化を確認した。1989年のバブル期でも2014年でも、男女とも食費で最も多くを占めるのは「外食」だが、その支出額は減っており、「外食離れ」の様子がうかがえた。

「外食」のほか、男性では「果物」や「酒類」が減り、調味料や食材、「調理食品」が増えていた。女性では「果物」をはじめ各種食材が減り、「調理食品」が増えていた。

これらの変化から、男性では外食を減らして、家で料理をしたり調理食品などを食べるように、女性では外食や家での料理を減らして、調理食品を食べるようになっている様子がうかがえた。また、これらの変化を背景に、食料費の内訳の男女差は薄まっていた。

なお、男女とも外食が減った背景には、若者の節約志向や健康志向のほか、外食産業における変化の影響もあるようだ。近年、外食産業ではサービスの多様化、価格競争の激化により、安価で高品質な選択肢が増えている。また、男女とも「果物」の支出が減っており、「フルーツ離れ」が見られるが、果実摂取量の減少は国民的な課題である。

若者の「アルコール離れ」については、30歳未満の単身勤労者世帯の男性では「酒類」支出額が減少していたが、女性ではそもそも「酒類」支出額が小さいためか、さほど変化が見られなかった。

しかし、厚生労働省「国民栄養・健康調査」によれば、20代の飲酒習慣率は男女とも低下しており、女性でも「アルコール離れ」をしていた。なお、飲酒習慣率を見ると、男性では30~50代でも「アルコール離れ」をしていた。一方、高齢男性と30代以上の女性では飲酒が増えていた。

久我尚子(くが なおこ)
ニッセイ基礎研究所 生活研究部 准主任研究員

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