政治的影響

金融への影響と並ぶ「三次的影響」が、保護主義的な動きの拡大である。6月26日に出直し総選挙が行われたスペインでは、保守派が勢力を拡大し市場をある程度落ち着かせた。しかし、スコットランドでは24日、スタージョン首相が、EUに残留し英国から独立することを再度問う住民投票の準備を示唆した。

更に、2017年は、オランダ、フランス、ドイツなどの大国の選挙が目白押しである。今年から来年にかけてのこうした選挙・投票関係のある国はEUのGDPや金融システム全体の8割前後に上る(図表12)。それぞれの政治イベントで徐々にEUからの離脱派が勢力を増していくと、(まだ可能性が低いが)EU自体の在り方が問われるようになるだろう。

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なお、金融システムの課題が大きいイタリアについては、当面選挙は予定されていない。7月1日から、少数派を排除しやすくするような選挙制度改革が実施されるため、政権はどちらかと言えば安定化に向かうとみられている。しかし、中長期的には、6月19日に地方選で勝利した新勢力「5つ星運動」が一層力をつけ、EUからの金融面での束縛や景気の鈍化などを問題視し始めた場合、反EUの動きへと発展する可能性もあるだろう。

まとめ:

BREXITの一次~二次的影響については、ほぼ想定通りに推移している。しかしここから先の三次的影響、即ち、金融ルート、政治ルートの波及については読みにくい部分が多い。日本については、"とばっちり"を受けているという面が大きいものの、方向性がはっきりするまでは、金融機関への投資は、債券、株式投資ともに慎重スタンスで臨みたい。

大槻 奈那(おおつき・なな)
マネックス証券 チーフ・アナリスト

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