無料メッセージアプリとしておなじみのLINE。全世界の月間アクティブユーザー数(MAU)は約2億1500万人に達した(2015年12月時点)。日本国内でのMAUは5800万人で、総人口の45%以上をカバーしている。スマホ利用者なら大半にとっては事実上「標準搭載」ともいえるアプリだ。だが世界にはLINEに立ちはだかる競合サービスはいくつも存在する。本稿ではメッセージアプリの競合サービスをご紹介する。
上場に至るまで 2年越しの上場
LINEが最初に上場を申請したのは2014年。そこから上場まで2年もの時間を要したのは、親会社である韓国IT大手企業NAVERが、普通株の10倍程度の議決権を持つ「種類株式」を発行することにこだわったことが一因とされている。当時は最終的に上場見送りとなったが、公開に伴う買収防衛策だったことは明らかで、それだけLINEを手放したくなかったのではと予想される。
競合サービスの紹介 WhatApp、Skype、他……
LINEの今後を考える際に無視できないのは、同様の機能を持つ他社のサービスだろう。日本では絶大なシェアを誇っているLINEも、世界で見ると利用者数は第7位だ。上位にいるのはFacebookメッセンジャーやWhatsApp、SkypeやViberなど。これら競合サービスの特徴や、LINEの独自性も気になるポイントだ。
Facebookメッセンジャー 全世界でMAU9億人突破
FacebookメッセンジャーはFacebook専用のメッセージアプリだが、今年に入りMAUが全世界で9億人を突破した。Facebookアカウントを持っていなくても電話番号だけで利用できるサービスだ。国内の利用者数は公表されていないが、MAUが2000万人ほどいる「Yahoo!メール」アプリを超える規模であることが分かっている。幅広い世代をカバーしているLINEと比べると、20、30代の利用者が特に多いことと、あくまで「メッセージ」に特化していることが特徴だ。
WhatsApp Facebookが買収
Facebookが2014年に190億ドルという莫大な金額で買収したのが「WhatsApp」だ。大きな後ろ盾を得ていまだに成長を続け、利用者は今年10億人を超えた世界No.1アプリだ。LINEと同じく音声通話機能も搭載されており、通信事業者経由ではなくネット上で通話ができる。
自国の無線通信事業者に高い通話料金やSMS料金を支払わずに済むことから、ヨーロッパや南米のほか、アフリカやインドといった発展途上国において、メッセージや画像、動画を送受信する手段として絶大な人気を誇っている。
Skype ビジネスシーンでの活用も
ビデオチャットのイメージが強いSkype は現在、世界5位のコミュニケーションアプリだ。MAUは世界で約3億人(2014年現在)。2011年にMicrosoftに約85億円で買収され、同社の一部門となった。その影響もありビジネスでの利用も多く、最大250人とのユーザーでのオンライン会議が可能なSkype for Businessを有償で展開している。
Viber メッセージ送信でポイント付与も
MAUが2億3000万人(2015年)で世界第6位のViberは、楽天が2014年に買収した無料通話・メッセージアプリだ。通話の品質には定評があるものの、チャットは1対1でしかできないことから日本国内での普及は遅れている。楽天スーパーポイントと連携し、1人にメッセージを送信するごとに1ポイントの楽天スーパーポイントがもらえるキャンペーンなども展開されている。
このように世界にはLINEと競合するアプリがあふれている。しかし、どれもメッセージ交換や通話によるコミュニケーションに重きを置いている。この中でLINEは独自の事業展開を行い、より世界進出に勢いをつけようとしている。代表取締役社長 CEOの出澤剛氏がかねてから唱えている「プラットフォーム化の推進」がその軸だ。プラットフォーム化とはつまり、LINEのアカウントを軸に様々なサービスをひもづけるということだ。
LINEの戦略「プラットフォーム化」
現在でもLINEは多くのサービスを提供している。LINEの友だち同士なら手軽に送金や割り勘ができる「LINE Pay」、定額制音楽聴き放題サービスの「LINE MUSIC」、LINEにアルバイト情報が届き、応募もできる「LINEバイト」、そしてタレントやアーティストのライブ配信動画が楽しめる「LINE LIVE」などだ。マスメディアが公式アカウントを持ち、自社の編集方針に沿って使ってニュースを配信できる「LINEニュース」には現在60社以上のメディアが登録しており、オープン化も進んでいる。ここまでの多様な展開をみせるメッセージアプリはLINEの他にはない。
今後のLINE プラットフォーム化の先へ
サービスのプラットフォーム化は同社の収益面でも良い影響を与えると見られている。サービスを増やせば増やすほど、広告を載せる場所も増えるからだ。利用者の好みにあった広告を自動配信するサービスも始めており、広告メディアとしても地位を築きつつある。課金収入と広告収入という2つの収益源を持つことができるため、より安定した収入が見込めるということだ。
ただ、メッセージアプリの中で独自性を出すことに成功しても今度はプラットフォーム事業で先行する楽天やヤフーなどとの争いは免れないだろう。常に魅力的な独自性を掲げ、世界中の利用者にとっての生活プラットフォームとなることは可能なのだろうか。今後のLINEの進化に注目したい。