◆税収は大幅に上振れ

2014年度の一般会計の税収(決算見込み)は53兆9707億円となり、前年度よりも7.0兆円(前年比14.9%)の大幅増となった(図表23)。もちろん、この中には消費税率引き上げによる増収分も含まれているが、消費税率引き上げに伴う増収分を差し引いても、2014年度の税収は2.5兆円(前年比5.3%)増えていた計算になる。

1997年度は消費税率引き上げによる消費税の増収(前年比3.3兆円)はあったものの、企業収益の悪化により法人税が大きく落ち込んだことなどから、税収全体の前年度からの増加幅は2.1兆円(前年比4.3%)にとどまった。

2014年度の税収の内訳をみると、名目ベースの雇用者報酬が比較的高い伸びとなったことや配当、株式譲渡益の増加から所得税が前年比8.1%の高い伸びとなったほか、企業業績の好調を反映し法人税も5.1%の増加となった。

また、消費税収は前年から5.2兆円増の16.0兆円となった。財務省によればこのうち4.5兆円が消費税率引き上げによる増収分となっている(8)が、この部分を除いても消費税収は前年比0.7兆円(前年比6.1%)の増加となる。

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ただし、2014年度の個人消費が急速に落ち込んだにもかかわらず消費税収が増税の影響を除いても明確な増加となったことにはやや違和感もある。消費税は主として個人消費にかけられる税(9)であるため、個人消費との連動性が高い。

2014年度のGDP統計ベースの個人消費は名目で前年比▲1.1%、実質で前年比▲3.1%であった。通常は消費税の伸び率は名目の個人消費の伸びとの連動性が高いが、2014年度の名目個人消費の伸びは消費税率引き上げによって嵩上げされており、その分を取り除くと前年比▲2%強のマイナスとなり、消費税収の実績とは大きな乖離がある。

また、2014年度の消費税収は当初予算から0.7兆円(4.5%)上振れした。通常は政府見通しにおける名目個人消費の見通しと実績値のズレは税収見通しと税収実績のズレと方向が一致するが、2014年度は個人消費の実績が見通しから大幅に下振れしたにもかかわらず、消費税収は大幅に上振れしており、両者の関係がちぐはぐになっている(図表24)。

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この理由のひとつは国内の個人消費として扱われない訪日外国人の急増(10)で個人消費の伸び以上に消費税収が増えることだが、それ以外にいくつかの可能性が考えられる。

(1)免税事業者や簡易課税選択制度により発生する益税の規模が小さくなっている可能性があること、(2)税率引き上げによる増収分の多くが2014年度に前倒しで納付されている可能性があること、(3)現時点では、GDP統計の2014年度の個人消費は速報値であり、確報値で上方修正されることにより税収との乖離が縮まる可能性があること、などである。

このうち、(2)については消費税の納付が前倒しされているのであれば、その分2015年度の消費税収が少なくなるはずであるが、このことを知るためには2014年度と2015年度の消費税収を合わせてみる必要がある。また2014年度のGDP統計の確報値は2015年末に公表される予定となっている。2014年度の個人消費と消費税収の関係が明確となるまでにはしばらく時間がかかりそうだ。

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8)財務省は2014年4月の消費税率引き上げによる増収分6.2兆円のうち、2014年度が4.5兆円、2015年度が1.7兆円(いずれも一般会計)としている。
(9)消費税は住宅投資、政府支出の一部にもかけられるが、ウェイトは個人消費が圧倒的に高い。
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10 )GDP統計では訪日外国人による日本国内での消費はサービスの輸出に計上される。
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