英国EU離脱,Brexit,日本経済,自動車,造船
(写真=PIXTA)

黒田日銀の量的緩和政策で「円安」誘導をしてきたものの、英国のEU離脱が現実味を帯びると急激な円高が進んだ。これが長引くようであれば、各企業は戦略の見直しを図る必要があるだろう。国内の産業が空洞化するリスクへの対応や雇用確保を本気で考えなくてはいけなくなる。

円高で製造業に大きなダメージ

英国のEU離脱を問う国民投票で離脱派の票数が残留派を上回ると、円高は一気に進んだ。さらに原油安や中国経済の不振が続くようなら、リスク回避のため市場の資金はさらに円に流れ、一層円高が進むと予想される。そうなれば、製造業・輸出企業への逆風は強まる。

円高が企業経営に及ぼす影響として、卸売業に関してはメリットとデメリットはほぼ拮抗するといえるが、製造業はデメリットが大きい。このため経費削減、海外での生産・販売拠点の拡大の強化を検討する必要がある。

自動車のマツダ <7261> の2016年3月期連結決算では、世界販売台数は過去最高の約153万台と好成績だったものの、純利益は前期比15%減だった。円高が進んだ場合、今2017年3月期の営業利益は減少を免れない。

トヨタ自動車 <7203> は円高が1円進むと年間400億円の減益といわれており、トヨタグループ全体の損失は数千億円規模になると見られる。今後、ドルが100円を割り、さらに95円と円高が進んでいけば、自動車業界全体の減益幅は2兆円になるのではとの専門家の予想もある。

円高が追い風となる企業・業種

円高は海外で作って日本で安く売るタイプの企業には追い風だろう。例えば、ニトリは他社より安い品物を求める顧客のニーズに応えるというブレない方針があり、海外でもそのブランドが浸透しつつある。

あるいは、輸入牛肉を使う吉野家や松屋といった牛丼チェーンにも好材料だろう。大和証券シニアストラテジストの石黒英之氏によれば、円安で値上げを余儀なくされていたユニクロも苦境から復活すると見られている。

反面、造船業界の川崎重工業 <7012> や三井造船 <7003> は、新規造船も減っており、原油安に加えて円高はダブルパンチ。建設機械業界のコマツ <6301> や日立建機 <6305> は、中国での不振と原油安に今後の円高が加わるとトリプルパンチということにもなる(ちばぎん証券顧問・安藤富士男氏)。