少し前まではバブルに沸いていたように見えた中国の不動産市場の見方が変わりつつあります。先日も中国メディアの1つである南方都市報に経済学者・馬光遠氏の見解として「中国の不動産市場が行き詰っていることは事実だ」と論じる記事が掲載されました。この馬光遠氏は2013年9月には不動産バブルが崩壊する可能性について示唆していました。また、野村証券のアナリストは「既に不動産市場の下方修正は『もし起きたら』ではなく『どれだけ厳しくなるか』の問題になっている」との見解を述べています。
5月26日の日本経済新聞の記事によると、上海や北京の大手不動産会社では人員削減や店舗閉鎖などのリストラが始まっており、また、地方の不動産会社には経営不安説が相次いでいるとのことです。米ムーディーズもこのような状況を考慮して21日には中国不動産業界の格付け見通しを「安定的」から「引き下げ方向(ネガティブ)」に見直しています。日本の不動産市場で中国人の存在感が強くなっているのも中国不動産バブル崩壊の現実を裏付けているものと考えられます。つまり、中国の不動産を高値で手放し、その売却資金で利回りも所有権も得られる日本の不動産を買うという構図が容易にイメージできます。問題は中国における不動産バブル崩壊がどこまで足を引っ張るかというところになります。
不動産投資がGDPに占める比率は15%にもなっており、ここが萎めば景気の急低下は否めません。そして、今や世界においても無視できなくなってしまった中国市場が急減速すれば、他の国々にもその影響は少なからずあります。前出の馬光遠氏は「『通貨の過剰発行』と『著しい経済成長』はすでに不動産市場をけん引する力を失って」しまっていると警鐘を鳴らしています。日本は景気回復に沸きつつありますが、巨大な隣国の状況によっては、冷や水を浴びせられる可能性も残っていますので、中国の動向を探りながら投資を行っていくという姿勢が重要となってきます。
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