3カ月ぶりに日経平均が1万7000円台を回復した東京株式市場。それを後押ししたのは米利上げを見越した円安だった。相変わらず、環境面では円安頼みの状況が続いている。ところが、利上げ観測が後退し為替相場が円高に振れても、相場は急反落することなく、小幅安にとどまり粘りを見せた。果たして、今の株式市場は円安頼みなのか。
収益に及ぼす円高の影響は以前より軽微に
円安であることが株式市場にとってプラスであるのは間違いない。リーマンショック以降の株式市場は、トレンド分析をするとドル円相場と相関関係を示し、円高時には株価は下落、円安時に株価が上昇を繰り返してきた。2012年12月以降のアベノミクス相場が円安を支えにしてきたことも疑いようのない事実である。
円安は輸出型企業の業績を上向かせ、それが全体のEPS(一株当たり利益)上昇につながり、株価を上昇させるというのが一般的な見方だ。足元の業績は言うに及ばず、人口が減少する日本において、内需頼みでは将来的に企業の成長が難しいとみられるため、円安によって輸出環境が良くなることは好ましい。ゆえに「円安=買い」が定石のようになった。
しかし1985年のプラザ合意で急速に円高が進んで不況になった時代と、現在では様相が異なる。企業は為替予約で円高の影響を軽微にする努力をしているのは当たり前。しかも、現地生産が進んだことで、かつてのように、為替動向で業績が激変することはない。予約が追いつかないなど、円が短期間で5円、10円と急激に変動した場合は、その限りではないものの、緩やかな円高に関しては、目くじらを立てるほどの悪材料ではないのである。円高は、内需型企業に原材料費軽減のメリットが生じることで、むしろ「中立」に近い材料とみることも可能だろう。
間違いなく円安は株の好材料。アベノミクス相場では、その変動率が大きかったために、株価も一気に駆け上がった。今後はプラス材料になるとしても、実質的に重要度は高くなくなるかもしれない。