「お金のある不幸」と「お金のない不幸」どちらがいいと思う?

上記の問いは『ナニワ金融道』の著者故青木雄二先生から私に投げかけられたものです。読者のみなさんは、どちらを選びますか?

今回は「お金は本当に人を幸せにするのか?」について考えてみましょう。

故青木雄二先生との出会いが人生を変えた

もう20年以上も前の話ですが、私は出版社の編集の仕事をしていました。

『ナニワ金融道』が大ヒットしていた時代で、私は漫画ではなく、エッセイを書いていただけないかと青木雄二先生に会いに行ったのです。

そうして生まれたのが青木先生の最初のエッセイ『ゼニの人間学』でした。おかげさまで、この本は30万部を超え、その後文庫にもなり大ベストセラーになりました。

冒頭の問いかけは、先生の自宅へお邪魔したときのものです。

このとき私は、「お金のある不幸」と答えました。
しかし、先生の問いかけは、20年以上経ったいまも私の中に残っています。私にとって生涯のテーマといっても過言ではありません。

私は、青木先生にお会いして、いろんな影響を受けました。
考えてみれば、「お金」に興味を持ったのも、青木先生との出会いがあったからです。

私だけではありません。
世の中には「お金と幸福」の関係について、様々な観点から調査や研究が行われています。そんな調査・研究をいくつか紹介しましょう。

年収○○○万円が幸せのピーク?

「お金で幸福は買えるか?」経済学の観点からその疑問に答えた人物は2人います。ノーベル経済学賞を受賞した心理学者ダニエル・カーネマンと経済学者アンガス・ディートンです。

2人の研究結果は、7万5000ドル(日本円にして約800万円)以上の年収を得ても、幸福度指数は上がらないというものです。

一般的に収入が上がるほど幸福度は増すと考えられがちです。しかし、2人の研究結果では、前述の数字に達してからは幸福度が上がらなくなり、むしろ下がるというのです。

収入が少ないと心理的な苦痛をともないますが、たくさんお金があるからといって、必ずしも幸福になれるわけではないのですね。

年収1000万円のお父さんは幸せではない?

博報堂ブランド若者研究所(NTTインターコム:協力)の調査で『人生とお金の満足度』があります。それによると年収1000万円のお父さんはやはりあまり幸福でない人が多いようです。

おそらく、お金と引き替えに、仕事の重圧や忙しさにより、家庭などが犠牲になっている場合が多いのでしょう。

興味深いのは、この調査では年収300万円のお父さんの中にも、幸福度70点以上という人が半数いたことです。一方で年収1000万円の人には、幸福度70点未満の人が3割強いるという結果でした。

幸福度が高いけれど、年収が低い人を「ハッピー父さん」として、その特徴を下記の様に表しています。

▽出世競争から降りている。
▽家族の仲が良い。
▽地域のつながりが強い。

一方、年収が高いけれど、幸福度が低い人を「不機嫌父さん」として、その特徴を下記のように表しています。

▽大企業のミドルが多い。
▽多忙で身動きが取れない。
▽自己評価は高いが、それに見合った能力がない。

これをみると、必ずしも「高収入が幸せの宝のカギ」というわけでもなさそうですね。