「永遠の0」の事例

例えば2013年に大ヒットした「永遠の0」では以下のような19社もの企業が製作委員会に名を連ねた。

東宝、アミューズ、アミューズソフトエンタテインメント、電通、ROBOT、白組、阿部秀司事務所、ジェイ・ストーム、太田出版、講談社、双葉社、朝日新聞、日本経済新聞社、KDDI、TOKYO FM、日本出版販売、GyaO!、中日新聞社、西日本新聞社

これらの企業は単に出資しているだけではない。原作の出版から公開後の二次使用まで、「永遠の0」というコンテンツに関わる企業が製作に参加している。

製作委員会の記載は概して出資額に順じており基本的には筆頭にくるのが最大出資者、いわゆる製作幹事社であることがほとんどである。

多くの場合参加する広告代理店はまさにメディアミックを担当するとともに、広告以外のコンテンツ・ビジネスを狙ってのことである(ここで興味深いのは、TV局が出資していないこと、主題歌を歌うのサザンオールスターズや主演の岡田准一の所属会社、レコード会社などコンテンツの内容にかかわる会社までが参加していることなどが挙げられる)。

製作委員会にもある欠点

製作委員会方式が大作、いわゆる大ヒットを確約しなければならないブロックバスターの製作に採用されるケースが大半であることから、そのネガティブな面が指摘されることがある。たとえばこういうものだ。

・各出資社のチェック(特に監督や脚本、俳優など)が入るので、最大公約数の観客を意識した安全パイの作品になってしまう
・テレビ局が製作参加している場合は、地上波テレビ放映を前提とした安全な表現に留まってしまう
・各メディア企業が参加するので、認知度の高い人気原作の企画ばかりが優先され、オリジナルの企画は通りにくい

こうした指摘は一部では間違ってはいない。特に最近は原作本の映像化やTVドラマの映画版が非常に多いのがそれを物語っている。これらはある程度ヒットが確実で、出資も権利もその妥当性が判断しやすいからだ。

しかし実態としてはそれがすべてとも言えない。企画立案から参加企業を募り、各社間の役割分担から権利調整は主に幹事会社が行う。参加企業も当然途中段階でのチェックは行うが、基本的には最初に幹事会社が提示した参加条件が優先されるのが実態だろう。