ハリウッドでは映画製作は投資

たとえばハリウッドでは、映画専門のファンドや投資会社が存在する。これらは企画はもちろん、キャストや脚本に口も出し、映画の結末も何パターンかつくり、スニークプレビュー(完成前の一般向け調査)の結果をもとによりヒットする映画に変えていく。「カネも出すが口も出す」というやつだ。

日本と違って、監督に編集権がないことが大半で、ヒットを確実にするため、言い換えれば投資へのリターンを最大化するために編集権は企画を立てたスタジオが持つことが大半である。

またファンドや投資会社がクリエイティブ領域にまで口を出すことも珍しくない。これらは映画ビジネスは純粋に投資と位置づけられているからだ。一方、日本の製作委員会は映画への投資というよりも、コンテンツの権利の確保という側面が強いと言える。

「口を出す」会社が少なければいいのか?

今までゴジラシリーズは東宝単独で製作されてきた(ハリウッド版を除く)。シン・ゴジラもこの前例にならったとも言えるが、10億円を超えるといわれている。邦画として、また東宝作品としても非常に高額の製作費をかけることは大きなリスクともいえるだろう。

そのようなリスクを取ってでも単独製作した理由としては、ゴジラが東宝、さらには邦画を代表するコンテンツであることから、東宝は前例にならって単独製作したことが考えられる。

単独製作の大きな利点は、多くの出資会社の意見を汲み取る必要がないことであり、企画・製作・クリエイティブをすべて東宝のみでコントロールできたことだったことが挙げられる。

そのコントロールが最も効いた要素は、アニメ「エヴァンゲリオン」シリーズを手掛けている庵野秀明氏を脚本・総監督に起用したことであり、彼の起用を決断した東宝のエグゼクティブプロデューサー山内章弘氏の功績だろう。

作家性が強く、カルト的な人気がある庵野秀明という稀有な才能を持つ監督に依頼することは、作品が一般受けするものにならないと思われる可能性もある。その点で合議が必要な製作委員会方式ではなく、複数社の意向を汲む必要がない単独製作であったことはプラスの要因になったことは確かだろう。

庵野氏は撮影前に、「この映画は珍しく東宝がお金を出してくれた。それを無駄なく使いたい」とスタッフに語ったとも言われている。東宝が庵野氏に賭けたのに対し、庵野氏もクオリティの高い作品を作り上げることでそれにこたえた。

公開4日間で興収10億円を超える大ヒットを記録したという「シン・ゴジラ」は、「単独製作」一点張りというリスクをとったことでは東宝は興業的にも、批評的にも大きなリターンを得ることができたと言える。(ZUU online 編集部)

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