笑顔の出産、そして笑顔の育児社会の実現を

データから見ると国際的には一見「産みの苦しみを放置している社会」に見える日本社会の無痛分娩施設不足の背景には、以下の要因があるようである。

まず無痛分娩サービスの供給サイドであるが、複数の医師(産科医師、女性外来医師、麻酔医)へのインタビューによれば、

(1) 麻酔医不足
(2) 医療の世界における産科麻酔医のブランドの低さ
(3) コストパフォーマンスの悪さ

等があるという。

また、需要(無痛分娩希望者)サイドであるが出産・育児雑誌等に寄せられる意見から見れば、

(1) 希望しても施設の空きがなかった
(2) 妊婦本人は希望しているが身内に、陣痛は当たり前などと反対された
(3) 無痛分娩費用がかかる(日本産科麻酔学会によれば、個人施設で0~5万円、一般総合病院で3~10万円、大学病院で1~16万円)

等が主な理由となって<需要の潜在化>が生じているようである。

医療サービス供給サイドの事情は当然あるだろう。しかし、他の先進国の無痛分娩率の高さ(図表1)を見る限り、供給サイドの問題は何かしら解決方法があるはずである。

また、女性活躍が日本より進む世界の先進諸国の水準を見る限り、日本においても女性の無痛分娩へのニーズは現在の実施数の10倍程度はあるのではないかと考えられる。

実際、民間アンケート調査においても無痛分娩は実に8割を超える支持のある分娩法であり、そのニーズの高さがうかがえる(図表6)。

残念ながら、このマイナビ調査によると、「反対派の多くは男性。『自然でないから』や『痛みを知ってこそ母親になれる』といった意見が男性から出ていたのが特徴的だった。」そうである。どれも実際に産む立場にないからこそでてくる意見であるように見える。

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子育ては男女ともおこなうことが可能であるが、出産だけは女性にしか取り組むことが出来ない。それだけに、「本気の女性活躍推進」というならば、海外から見るとやや異常ともいえる日本における「産みの苦しみ放置社会」とも言える状況を何とかするべきではないだろうか。

子どもにとって、親がどれだけの期間どうしてくれるのか、といった条件よりも、側にいるときは満面の笑顔で、心身にゆとりをもって接してくれる、そのことの方がはるかに幸福なのではないか、筆者にはそう思えてならない。

天野馨南子(あまのかなこ)
ニッセイ基礎研究所 生活研究部 研究員

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