◆貸出金利の"ゼロ・フロア":中小企業が割を食う可能性

貸出金利の低下が続けば、貸出金利がマイナスにならない限り、ある時点から大企業も中小企業もゼロ近傍の金利に貼り付くことになる(貸出金利のゼロ・フロア)。銀行から見ると、それならばリスクの低い大企業貸出を行った方が、リスクリターンが良いため、大企業貸出を選好しやすくなる(図表7)。

このため、中小企業は、大企業ほどの恩恵を受けない可能性がある。実際、大手行の最近の貸出態度指数をみると、大企業に対する貸出については「慎重化」が止まっているのに対し、中小企業向けの貸出については「慎重化」が続いている(図表8)。

20160927_7

20160927_8

◆まとめ

以上の点から、債券の管理変動相場化は、借入額の大きい、投資意欲の強い企業にとっては恩恵が見込める。株式発行の代替として劣後債の発行も活発化しているので、ROEを落とさず資本が増強できる。一方、金融機関は受難が続く。金融機関への投資については、株式・債券ともに当面は慎重方針で臨みたい。

大槻 奈那(おおつき・なな)
マネックス証券 チーフ・アナリスト

【関連リンク】
株は幻想で動く - 日銀の金融緩和強化について
【決算メモ】ピジョン(7956)
利上げが見送られたFOMC~12月利上げが有力に~
トランプ氏とクリントン氏のテレビ討論に注目
先週の中国株式市場 ― 上海株 反発 元高などを好感も上値はやや限定的―