M&A
(写真=PIXTA)

M&Aは、Mergers(合併) and Acquisition(買収)の頭文字を取ったものであり、端的には「対象企業あるいは事業に関する支配権の引き渡し/獲得、その対価の受領/支払い」となる。ただ、その形態や動機、目的はさまざまである。全てを網羅し解説することは不可能であるため、「買収」に限定して説明していこう。

会社の売買とは?

会社の売買であるが、会社の所有権(株式会社の場合は株式)が売り手Aから買い手Bに移り、買い手Bから売り手Aに対価が支払われる取引と理解できる。2016年初頭より「鴻海によるシャープ買収劇」が紙上を賑わした。鴻海からシャープに対し66%の出資が行われ、鴻海はシャープの株式の66%を取得し、実質的支配権を獲得したと言われている。では、なぜ66%で実質的支配権を獲得したと断言できるのであろうか。

会社法の規定上、定款の変更には株主の3分の2(約67%)の同意による特別決議が必要となっている。66%との差は、わずか1%弱である。鴻海にとって敵対する者はシャープ内に存在するとは考えられず、今後、経営陣の刷新に止まらず、定款の変更を随時行える権利を7掛け弱の対価で確保したと言えるからである。

会社を買収する目的とは?

2016年、米KPMGは米国企業家を対象にM&Aに関する調査を実施した。同調査によれば、2015年に引き続き、2016年も、IT、製薬/バイオテクノロジー、ヘルスケア、通信を中心にM&Aは活況を続けると予想している。また、会社買収の動機・目的について、2015年は「市場における競争的優位性の強化」が大多数であったが、2016年は「新ビジネスへの展開」「顧客層の拡大」及び「市場の地理的拡大」(36~37%)が主流になったとレポートしている。

日本においてもM&Aは重要な経営戦略の一つとなっている。その動機・目的であるが、2013年のデロイトの調査資料によれば「業界内でのシェア拡大」「事業展開地域の拡大」「ノウハウ・技術・無形資産等の獲得」「バリューチェーンの補完・強化」「スケールメリットの追求」となっている。

また、中小企業庁「事業引継ぎハンドブック」によれば、「後継者問題」が挙げられている。あるいは、ROI(投資対効果)の観点から、事業の引き継ぎではなく「出資金額以上に買収した企業の株価が上がる」か「買収企業を活用し、本体で投資以上の収益を確保できる」かどうかが、買収の目的となろう。海外から日本企業へのM&A(Out-In)の場合、資金援助を引き出すこと、買収企業から国際通貨の一つである「円資金ファイナンス」を低利で獲得することが、目的となるケースもあろう。