2014年6月3日、韓国サムスングループの事実上の持ち株会社とされているサムスンエバーランドは、取締役会を開き、2015年1~3期に株式上場を推進する決議をしました。同社の筆頭株主は、グループのオーナーである李健熙(イ・ゴンヒ)サムスン電子の長男、李在鎔(イ・ジェヨン)氏。上場は創業家の事業継承の一環で、「李在鎔氏らは上場で得た資金を、李会長の資産を引き継ぐ際の相続税か、系列会社の株式の買い増しに使うのではないか」と見られています。
韓国最大規模のアミューズメントパーク「エバーランド」やファッション事業を運営する非上場のサムスンエバーランド(2013年連結売上は約3兆2千億ウォン(約3,200億円))が、サムスングループの事実上の持ち株会社です。サムスンエバーランドがサムスン生命保険の大株主で、サムスン生命がサムスン電子などの大株主という構造になっています。サムスンエバーランド株式の45.56%を李一家が握っています。李在鎔氏が25.1%、李在鎔氏の二人の妹がそれぞれ8.37%の株式を保有します。
李健熙会長は、5月10日に急性心筋梗塞で自宅近くの病院の緊急救命室へ搬送され、一時心肺停止状態になりましたが、蘇生術が施され、意識を回復し、病状は改善しつつあると言われます。サムスンエバーランドの上場計画は、入院中の李健熙会長から李在鎔氏への事業継承の一貫だと見られます。李健熙会長から李在鎔氏への資産継承に必要な相続税が数兆ウォン(数千億円)とされていますので、サムスンエバーランドの上場益から相続税を捻出するものと見られます。なお、サムスンエバーランドの上場計画は、李健熙会長が入院する前から推進されていたもので、李健熙会長の入院とは直接関係ありません。
長男の李在鎔氏はソウル大卒業後、慶応大とハーバード大の大学院で経営学を学び、流暢な日本語と英語を話し、エレクトロニクスの技術動向に詳しく、目立った欠点はないと言われています。社内の求心力にも問題はありません。李健熙会長の長女もたたき上げで優秀と言われますが、李在鎔氏も優秀であり、後継者選びで懸念が生じたということはありませんでした。李一家は優秀な後継者に恵まれたと言えます。
しかしながら、サンリオの後継者と目されていた辻邦彦副社長(当時)が昨年出張先の米国ロサンゼルスでジョギングの後に急性心不全のため帰らぬ人となったり、ファーストリテイリングの社長後継者問題(柳井社長の息子2人は、現在ともにグループ会社の執行役員)があったり、自動車部品メーカーのユーシンや発毛のリーブ21などの社長公募など、後継者選びは、想定外の出来事もあり、一般的には大変難しいです。