「正直な納税者が全体のわずか2%」といわれるインドで、今年の夏「タックス・アムネスティ(租税特赦)」が4カ月にわたって実施された。

ナレンドラ・モディ大統領による大々的なキャンペーンが功を成したか、98億ドル(約1兆260億円)の海外逃避資産がインドに返還されたものの、今もなお5000億ドル(約52兆3450億円)以上の資産が国外に眠っていると見積もられている。

2014年から2015年の脱税総額は10兆円 96%が「回収困難」

今年6月、インドネシアが導入したことで一躍注目を集めたタックス・アムネスティ。課税対象となる秘匿資産を納税者から自主的に申告させる目的で成立した法律で、これまでに数カ国で実施されている。

トルコは2011年に引き続き今年7月から10月30日に2度目の導入、インドでは9月30日まで実施された。

国によって期間や条件は異なり、例えばインドネシアでは納付期限が6月18日から2017年3月と長目に設定されている。2016年6月30日以前に未申告だった税金の2%から5%の税金を、この期間中に納めれば滞納税が免除されるという仕組みで、好調な返還報告が報じられているようだ。

しかしインドでの実施は短期間であったうえに、そもそも脱税・所得隠し・申告漏れが当たり前のお国柄のせいか、どうも一筋縄ではいかないようだ。

モディ大統領のTwitter上の公表では、アムネスティ期間中の申告件数は6万4275件、回収総額98億ドル約1兆260億円)。インド政府に40億ドル(約4187億円)の追加税収をもたらしたことになるが、人口13億人という人口規模の巨大さから、実際には5000億ドル(約52兆3450億円)以上の秘匿資産が眠っていると推測されている。

これらの国民の多くは日雇い労働など脱税しやすい職に就いており、2014年から2015年の申告漏れは推定1050億ドル(約10兆9924億円)。そのうち「96%の回収が困難を極める」との見解を政府は示している。

富裕層による脱税も深刻だ。今年初旬には「パナマ文書(パナマの法律事務所、モサック・フォンセカによる租税回避を追跡した機密文書)」でも、5000人にものぼるインドの富裕層の税金隠しが指摘された。政府にとってはアムネスティを上回る強力な措置が不可欠となりそうだ。(ZUU online 編集部)