「現代アート」購入をオススメしない理由
現代アートとは、美術館に飾ってあるようなメジャーな作品のことではなく、普通はまだ評価の定まっていない作品のことを指している。中には、現在すでに高額で取引されているアートもあるだろうが、それが年数を経た後も、まだ同評価を得られるのか、より値段が上がっていくのかということに関しては、現時点ではわからないということである。
素人の我々からすると、現代アートを投資対象とするには、やはりいくつものハードルがあるように思われる。では、どのようなハードルが考えられるのかというと、以下の4点である。
1. 相場が安定していない
先にも少し書いたが、評価がまだ定まっていない現代アートは、将来が見えにくい市場である。アート市場とは、一部の富豪が高額商品を競って購入しているに過ぎないのが現状である。
2. レプリカの問題
万一、高額で取引されるようになると、必ずニセモノが出回るという問題がある。現代アートは、評価がすでに決まっているビンテージアートに比べると、鑑定士がまだ少ないという問題がある。たとえ鑑定士がいたとしても、どの鑑定士のいうことを信用するのかは、結局、自分自身が決めるしかない。
3. 市場が狭い
もともと、美術愛好家というのは数が少ない上に、現代アートを好む人となると、さらに数が減る。通常、市場というのは見込み客よりも、購入客の方が多くなるということはあり得ない。一般的にいって、購入客の少ない市場で素人が勝つのは、至難の技である。
4. 保管が難しい
美術品は保存状態で価値が決まるため、専門業者に預けるなどの措置が必要になってくる場合がある。また価値があればあるほど盗難リスクがあるため、専門業者に預ける費用がかかることになるかもしれない。
「アート」は、楽しんでこそ価値がある
そもそも、モノの値段というは、需要と供給で決まるものである。専門家がいくら「この作品には価値がある」といったところで、欲しい人がいなければ、そこに価値は生まれない。現代アートが実需品でない以上、その作品に価値があるかどうかを決めるのは、あくまでも購入者自身なのである。
要は、現代アートとは、個人の主観に左右されるマーケットである。そのような不安定な市場に、素人が貴重な資金を投じるというのは、筆者としてはあまりオススメできない。どうせなら、同じそのお金で美術館へ何度か足を運び、精神的に豊かになることの方が、よほどの「自己投資」になると思うが、いかがだろうか。
俣野成敏(またの なるとし)
1993年、シチズン時計株式会社入社。31歳でメーカー直販在庫処分店を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)や『一流の人はなぜそこまで◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に10万部超のベストセラーに。2012 年に独立。複数の事業経営や投資活動の傍ら、「お金・時間・場所」に自由なサラリーマンの育成にも力を注ぐ。