仲介手数料を割引している良い不動産会社を見つけるには?(1)

不動産の売買を検討している方向けに「仲介手数料を割引している良い不動産会社を見つけるには」というテーマで2回にわたって記事を掲載していきます。前編の今回は、不動産売買の仲介手数料について詳しくお伝えします。

不動産の仲介手数料とは

街なかの不動産会社や、インターネットでみつけた不動産会社に問い合わせをし、不動産取引の契約が成立すると、ほとんどの場合、物件の紹介・見学から契約・引き渡しまでを任せた不動産会社に仲介手数料を支払います。

不動産会社は、不動産物件の広告をした時と注文を受けた時に、必ず「取引態様」を明示するよう法律で定められています。「取引態様」とは、不動産会社がどの様な立場で取引にかかわったのか(媒介・代理、自ら当事者)を表す言葉ですが、明示が義務付けられているのはこの「取引態様」によって、注文者(売主・買主、貸主・借主等の当事者)が、不動産会社へ支払うべき報酬が異なってくるためです。

不動産広告の物件詳細には必ず記載されている「取引態様」の欄に、「仲介」(媒介)とあるものは、仲介手数料がかかります。

仲介(媒介)とは、物件と売主・買主を巡り合わせ、結びつけるために間を取り持つことを指し、売買あるいは賃貸の契約締結に至るまでに必要な物件調査や、重要事項説明書及び契約書類の作成、売主の売却に係る手続き、買主のローン返済のプランニング及び金融機関とのやり取りの代行、登記関係を委任する司法書士事務所など各方面とのやりとり、スケジュールのセッティングなど引き渡しまでの全般の業務を、当事者に代わって不動産会社が行います。

仲介手数料とは、その業務について支払う成功報酬です。そのため、取引が成立しない場合には支払う必要はありません。

この仲介手数料の報酬額は、宅地建物取引業法で国土交通大臣が告示した上限を超えてはならないと定められています。

7割強も「まったく知らない」不動産の仲介手数料の仕組み

不動産流通システム(REDS、レッズ)が、2016年9月にインターネットで実施した「不動産の賃貸、売買の仲介手数料に関する認知度」アンケートの調査結果によると、「不動産取引の仲介手数料がいくらとなるか、知っていますか?」の質問に対し、不動産賃貸の仲介手数料に関しては、男性は4割、女性は5割近くの人が「全く知らない」と回答しました。

さらに、「不動産売買における仲介手数料に上限額が定められていることについて」は、男女ともに7割近くが「全く知らない」と回答し、「売買価格が400万円を超える不動産売買の仲介手数料がいくらになるか、知っていますか?」の質問には男性7割、女性8割が「全く知らない」と回答。一般消費者の多くは不動産売買の仲介手数料に上限があることを認知していないということがわかりました。

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また、土地総合研究所が、主に不動産仲介を行う宅建業者247社を対象にした「不動産業についてのアンケート調査」報告書によると、「不動産仲介の実際の手数料の額はどうなっていますか」という問いについて


(1)宅建業法令に基づく上限基準を適用している 83.8%
(2)独自の基準を設けて適用している 2.0%
(3)目安となる基準はあるが、実際の報酬額は状況に応じて低いものを適用している 7.7%
(4)無回答 6.5%

という回答結果となりました。仲介業者の8割以上が、法令に基づき受領することができる最大の「上限額」を仲介手数料に設定し、受け取っていることが示されています。

これまで見てきた2つの調査から、ほとんどの契約当事者は、「手数料の額をどう決めているのか理解しないまま仲介業者に言われるままに支払っている」ことが読み取れます。

大きな金額の売り買いとなる不動産売買は、一般的には人生においてそう何度も体験するものではないため、一般消費者はプロである宅建業者(仲介会社)と比較すると、当然のことながら格段に経験が少なく、知識がないことがその一因でしょう。

宅地建物取引業法は、こうした宅建業者と消費者の、経験と知識量の不均衡による不利益から消費者を保護することを、目的のひとつとして定められています。そのため宅建業者の仲介手数料には上限額のみが定められており、本来は上限額以内であれば安くしてもいいのです。ところが、このことはほとんど知られておらず、業者に請求されるままに上限額いっぱいの額を支払っている場合がほとんど、というのが現状です。

数十万~数百万円単位になる不動産売買の仲介手数料

不動産の賃貸借契約の仲介手数料は、「借賃1ヶ月分」が基本となっており、居住用の建物については、貸主・借主それぞれから受ける報酬額の上限は0.5ヶ月分まで、それ以外の賃貸借の場合も貸主・借主双方の仲介手数料を合計した額は、借賃1ヶ月分に相当する金額以内であるよう、上限が定められています。

不動産の売買契約の場合の上限額は、取引価額(税抜きの売買価格)が

200万円以下の場合 5%
200万円を超え400万円以下の場合 4%+2万円
400万円を超える(以上の)場合 3%+6万円

という速算式で求めることができます(消費税8%をプラスする)。

一般的な新築住宅や、築浅中古物件など居住に適した不動産物件の売買価格は、400万円を超えていることがほとんどであるため、不動産売買の仲介手数料はたいていの場合は、3%+6万円(+消費税)の速算法で求められます。

例をあげると、不動産会社が3,000万円の不動産売買の仲介をした場合は、

3,000万円×3%+6万円=96万円

96万円×1.08=103万6,800円

103万6,800円が一方の当事者から受領できる仲介手数料の上限額となります。

近年、不動産会社の店頭ののぼりや、インターネット広告などで「仲介手数料無料」や「仲介手数料半額」「割引」などの文字を目にすることも増えてきました。

例えば上記と同じ3,000万円の物件を購入するとき、通常の手数料がかかる不動産会社から購入するのと、仲介手数料を無料にする不動産会社から購入するのとでは、かかる費用が103万円も異なります。取引価格によっては、数十万~数百万円の費用が節約できることになります。

仲介手数料を割引する会社の登場

国土交通白書(平成28年6月公表)によれば、平成26年度末の宅地建物取引業者数は約12万3,000となり、9年ぶりの増加となっています。宅建業者の増加に伴い、業者間では熾烈な顧客の取り合い競争が激化しています。

そこで、他社との競争を勝ち抜くための差別化のひとつとして、物件価格の値引きだけでなく、一般消費者が「通常どうしてもかかるもの」と思いこんでいる仲介手数料を安くすることを、自社のセールスポイントに掲げる不動産会社が現れるようになりました。

当初は、主に学生や新社会人など手持ちのお金が少ない層をターゲットとした不動産賃貸業者を中心に、そうした動きは広がりを見せましたが、近年では不動産「売買」にもその波が押し寄せています。売買の仲介手数料の割引は、買主側の手数料を割引または無料にするケースが一般的でしたが、今では買主にとどまらず、売主サイドについても仲介手数料を割引または無料にする不動産会社も出てきました。

仲介手数料割引の認知率は極めて低い

前述のREDSの調査結果では、「不動産売買の仲介手数料が半額や無料になる会社を知っていますか?」の質問に対し、その存在を知っている人は回答数が約1%と、極めて少ない結果となっています。

「大手」不動産会社ではほとんど割引が効かないと思っていた方が良い

業界で仲介手数料の割引が広まってきているとはいえ、いわゆる「大手」といわれる不動産会社では、会社として手数料の割引に乗り出しているところはほとんどありません。ただし、会社の方針として打ち出していなくとも、支店や担当者ごとで取引によっては手数料を割り引くこともあるかもしれません。

REDSの調査で、「不動産会社を選ぶポイントについて、重要と考えるもの」を質問したところ、4割弱が「仲介手数料が安い会社」と「知名度があり、規模の大きな会社」を上位に選びました。しかし、「仲介手数料を半額や無料にする会社の利用意向」については、「利用を検討しても良い」と回答したのは2割にとどまり、約半数が「利用は検討しない」と回答する意外な結果となりました。

仲介手数料が安くなることへの関心は強いものの、やはり人によっては一生で一番大きな額の取引となる不動産売買は、知名度があり、規模の大きな大手不動産会社の方が、信頼性において不安が少ないと考えられていることがわかります。

大手不動産会社は、知名度があり規模が大きく歴史もあるというだけでも充分に顧客をつかむことができているため、わざわざ仲介手数料の割引をしてお客を呼び寄せる必要がないのです。
消費者が、不動産の取引においてどれだけ「信頼性」を重視しているかがわかります。

次回は、仲介手数料の割引を行っている不動産会社が構築している仕組みと、良い不動産会社を見つけるポイントについて、お伝えします。

関根祥遙
都内北西部を中心エリアとする不動産会社で売買営業として勤務。消費者に寄り添った視点で、これからの宅建業者に何が求められるかを真摯に伝えたいという思いから執筆活動に従事。東京都出身・在住。(提供= 不動産流通システム )

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