加速する業界再編 回復見込みは少ない

世界的な船舶供給過剰と運賃が下落した結果、各海運会社は合併や不採算航路の廃止、超大型船によるシェア拡大などを推し進めており、特に買収・合併の動きが目立つ。

合併による経営効率化でコスト削減効果が見込めることや、競争による疲弊を回避したい狙いだ。ドイツの海運大手と中東大手の合併をはじめ、中国の海運大手2社が合併して世界最大の海運会社が誕生するなど世界的に合併による業界再編の動きが加速しており、巨大海運会社が相次ぎ誕生している。日本でも日本郵船・商船三井・川崎汽船がコンテナ船事業の統合を発表している。

また、海運アライアンスの再編も考えられる。海運アライアンスとは、アライアンスに加盟している各海運会社が船舶を共同運航して効率よく輸送を行うことを目的とした組合のようなものである。

海運アライアンスは貨物の効率的な輸送を実現し、かつ値下げ競争による疲弊を回避できるというメリットがある。韓国の韓進海運の破たんが日本郵船など日本の海運会社に大きな影響を与えたのも韓進海運と日本郵船などが同じアライアンスに加盟しており、日本郵船の貨物の一部を韓進海運が輸送していたからである。

今後も海運市況の回復が見込みにくい中で、当面は業界再編の動きが続くと考えられる。

構造的な不況からの脱却は一筋縄ではいかない

現在苦境に立たされている海運業界だが、これからすぐに回復する見込みはまだ立っていない。船舶の需給バランスの調整には時間がかかるうえに、一部では鉄鉱石需要が2019年にピークをつけた後は減少するという分析もあり、構造的な不況からの脱却は一筋縄ではいかないと考えられる。

こうした状況を踏まえて、今後も各海運会社の合併など業界再編の動きが続くと考えられ、巨大海運会社の誕生など非常にダイナミックな動きが次々と出てくるのではないだろうか。(アナリスト 樟葉空)

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