今年3月英エコノミスト紙が発表した「国際的脅威トップ25」で、10位に輝いた「トランプ大統領誕生」がまさかの現実と化した11月8日。

他国同様、世論や常識を信用しきっていた英国のメディアは驚愕をあらわに新大統領の誕生を報道。それと同時に、結果発表直前までの「トランプ政権誕生はあり得ない」といった態度を一転させ、トランプ大統領の誕生を「歴史的革命」と大々的に取りあげた。

ほかの多くの国同様、「決まってしまったものは仕方ない」と、あくまで結果を受けいれての反応であったことは一目瞭然だ。他国の報道と異なる点は、今年6月に自国の歴史を塗りかえたBrexit投票との接点を見いだす報道が目につくことだ。「アジア最大の負け組」として日本が挙げられている点も、日本人としては非常に気になる。

英国首脳の冷ややかなコメント

トランプ政権の誕生を熱烈に支持していたナイジェル・ファラージ元英独立党(UKIP)党首は、「トランプ氏お抱えのEU大使になりたい」とまで発言しているが、大方の首脳の反応は冷ややかだ。トランプ政権を表立って否定しない反面、儀礼的に祝杯をあげている印象は否めない。

過去のトランプ大統領の問題発言に、猛烈な批判を投げかけたこともあるテリーザ・メイ首相は、両国間の「自由と民主主義に基づく特別な関係」を主張。「今後も引き続き、貿易や安全保障分野で強力な関係を維持していきたい」と祝福。

「ニューヨークの特定の地域を訪問しない理由は、トランプに遭遇したくないから」とまで公言していたボリス・ジョンソン外相も、「国際的好況や安定を目指し、ともに働きかけていくことを楽しみにしている」と前向きなメッセージをTwitterに投稿した。

これに対し英労働党ジェレミー・コービン党首は「全世界にとって衝撃の結果」と一刀両断。「トランプの勝利は、これまでの政策や経済体制が多くの国民に適切ではなかった事実を反映している」と、世界秩序への懸念の色を隠せない。

スコットランドのニコラ・スタージョン首相も、「(トランプ氏の宣言通り)多文化要素あふれる近代的な大統領であることを証明して欲しい」と期待を示す裏で、「個人的に望んでいた結果ではない」と認めた。