逃げ恥,仕事
(画像=Webサイトより)

最近人気のTBSドラマ『逃げるは恥でも役に立つ』では、新垣結衣さん扮する女性主人公・森山みくりは、勤めていた派遣の仕事を失い、星野源さん扮する男性主人公・津崎平匡(ひらまさ)宅でハウスキーパーとして働くことになる。2人は、「住み込みフルタイムで家事代行業を請け負う」という契約を交わす。それは、雇用主と従業員という関係の契約結婚だったという内容である。

「逃げ恥」で描かれている世界を事例に、我々が日々向き合っている「仕事」について考えてみよう。

才能とは「他人が喜ぶこと」の中にある

ドラマの第1話で、森山は津崎に自分が派遣切りに遭った時のことをこう話す。

「私ともう1人のどちらか、という局面があって、でもやっぱり(私は)選ばれなくて。誰にも認めてもらえなくても、自分は自分として頑張ればいいって。わかっちゃいるんですけど」

森山は、自分では一生懸命やったはずなのに認めてもらえなかった挫折感と、津崎から仕事で初めて認めてもらえた喜びを打ち明ける。すると、津崎から「契約結婚」のために作成した契約書と見積書を提示され、契約するに至る(もともと契約結婚を先に提案したのは森山)。

このドラマが斬新なのは、家事をすべて時給換算し、雇用契約を結ぶところにある。最近、政府ではサラリーマンの配偶者控除の見直しについて、盛んに議論されているが、もともと配偶者控除とは、高度成長期時代に夫が仕事に集中できるよう、家庭を預かる主婦の労働に価値を認めて始まった制度である。だが、ここまではっきりと家事に価格付けをすることは、これまで行われてこなかった。

「頼まれてもいないことをやって評価される」

筆者がこの物語の中で注目したのは、主人公が仕事の面白さを知ることになった「網戸を清掃した話(第1話)」である。

森山は、雇い主を喜ばせようと、指示をされてもいない網戸を自ら清掃し、津崎に評価される。この「頼まれてもいないことをやって評価される」ことは、仕事をする上での大きなポイントである。そしてさらに重要なのは、頼まれたことには及第点以上とっていること。これができていなのにチャレンジすると逆効果になることがあるので注意してほしい。

ドラマでは、森山が派遣切りに遭ったのは理不尽なできごととして描かれているが、残念ながら、仕事は自己満足では務まらない。もし、森山が派遣社員として優秀だったのであれば、たとえ予算の都合で切られたとしても、必ず次の仕事が入るはずである。だから森山にそうした声がかからなかったということは、彼女は派遣社員としてイマイチだったということになる。

ところが、そんな森山が家事代行業という個人事業主として、雇い主から評価された。仕事自体は一見、大学院卒がやるような業務ではないように見えるが、家事代行業こそが「雇い主に特化したきめ細かいサービスができる」「効率よく家事をこなせる」という、森山の才能を存分に発揮できる仕事だったのである。