ナビゲーションを使うのは車に乗っているときだけではなくなっている。スマホの地図アプリやナビゲーションアプリを見ながら、目的地に歩いている人の姿は街なかでよく見かける。スマホ用のカーナビアプリの種類も増え、GoogleマップやYahoo!のカーナビなど無料でできるものが多いのも魅力的だ。
それほどアプリが便利で身近になった今、車にカーナビ専用機は必要なのだろうか。
スマホのナビアプリで十分なのか
スマホでカーナビは十分と考えている人たちが多くなっている。スマホのナビは無料なのに高機能化が進んでいるからだ。Yahoo!カーナビはVICS情報に加えて利用者の走行データから得た主要幹線道路以外の交通情報の渋滞回避ルート探索に活用できる。またリアルタイムの駐車場満空情報やガソリン価格情報もついていて利便性が高い。
もう一つ人気が高いのはDeNAのナビロー。こちらは地図更新はもちろん、ドライブレコーダーやARモードも無料で提供されている。
トヨタも12月から無料スマホナビ「TCスマホナビ」を発表したばかりだ。他に有料のものもあるが、それでも月に数百円程度なので、痛い出費ではない。そんなに頻繁に車に乗るわけではなくドライブに使う程度であれば無料のスマホナビアプリでちょうどいいはずだ。
だが、仕事でカーナビを使う人たちにとっては、スマホナビでは厳しい部分もある。一番の理由は、スマホナビの大半が自車位置測位をGPSに頼っていることである。トンネルに入ったり、高層ビルが立ち並ぶなかを走ったりする場合、GPSが届かなくなり、ナビがうまく作動しなくなるなど、精度が落ちることが多い。
この点では、ジャイロや加速度センサーが搭載されている専用機の安心感にはかなわないだろう。行ったことのない場所に、時間を決めていかなければならないビジネスでの使用においては、スマホナビだと少し不安が残りそうだ。
スマホでナビを使い続けていると、バッテリーの消耗がかなり激しいうえ、本体が発熱することもある。スマホ用のカーチャージャーも出ているが、スマホは充電しながら使用していると発熱がひどくなるので、特に夏の猛暑地は注意が必要となってくるだろう。
さらにスマホカーナビにする場合、道路交通法違反の恐れも出てくるので、クレードルを取り付けるなど、所定の場所を作らないといけないので面倒である。
ただし、この点に関しては、市販のナビを取り付ける際にも出てくる問題であるうえ、輸入車の高級スポーツカーなどは、スマホナビの方が目立たずスタイリッシュにまとまるという利点を挙げる人もいるかもしれない。
選択肢が増えたカーナビ専用機
カーナビが必要な人はどのようなものを選べば良いのだろうか。一昔前までは20~30万円のカーナビは当たり前だったが、今は随分と値下がりし、市販のハイエンドタイプのナビでも10万円代後半くらいで見つかるものもあるくらいだ。最も安いポータブルナビでも、安いものを選べば1万円代でも見つかるようになっている。その意味ではカーナビ専用機の導入のハードルはかなり下がっている。
最も安心感が高いのは、メーカーやディーラーオプションとして納車時につけてもらう形だろう。このようなオプションナビには、最新の技術が搭載され保証期間も市販のナビより長いことが多い。
機能を重視するなら、市販のハイエンドタイプが良い。自車位置の精度や渋滞回避なども含めたルート案内などについて、各社は長年技術を磨いてきたが、ナビゲーション機能だけでは他社との差別化が難しくなってきている。
そこで大画面、音声検索、高音質化など付加価値のついたナビが続々登場した。特に音声検索に関しては、iPhoneのSiriなどスマホに限らず、カーナビでも搭載が当たり前になってきている。音声検索は運転中、画面に気を取られないので、安全性の面でも有効だ。
具体的には、パイオニアのサイバーナビ、パナソニックのストラーダ、ケンウッドの彩速ナビ、三菱のダイアトーンナビなどがこれにあたる。
そして市販のエントリーモデルも見逃せない。パイオニアの楽ナビをはじめ、パナソニックやケンウッドなど各社10万円前後で手に入るうえ、とくにナビゲーションシステムに関しては高い技術を搭載しているので、満足度が高いだろう。
もっと価格を抑えて手軽にカーナビを使いたいという人にはポータブルナビという選択肢がある。パナソニックのゴリラ、ユピテル、パイオニア楽ナビのポータブル版などがこれにあたる。実勢価格で5万円程度だが、ネットなどで格安店を探していくと1万円台のものも見つかる。
ただし安いモデルは必要最小限の機能しか搭載されておらず、ジャイロセンサーがついてないものもあるの。精度に関しては少し不安が残る場合も。ただスマホナビアプリが勢いづいたことで選択肢が増えたことは良いことだ。ビジネスや日常生活など自分のスタイルに合わせて最適なカーナビを選びたい。(モータージャーナリスト、高橋大介)