奨学金と言うと学資を支給してくれる制度とポジティブに捉える人が多いだろう。確かに経済的な事情により学資に不自由する人にとっては、奨学金で学資を支給してもらうことで、金銭的な不安を軽減し、学業に専念することができる。
だが、ほとんどのタイプの奨学金は卒業後返済しなくてはならないもの(貸与型)であるため、奨学金を受けて卒業した人は、卒業と同時に数百万円の借金を抱えることになる。
実際に奨学金を返済できないために自己破産してしまう人も少なからずいるのは事実である。どれくらいの人が奨学金のために自己破産しているのか、なぜ自己破産と言う道を選ばざるをならなくなるのか、また、自己破産に至る前に何ができるのかについて探っていく。
増えている?奨学金で自己破産してしまう人
文部科学省所管の 独立行政法人・日本学生支援機構の調査 によると、日本学生支援機構の奨学金を受給している大学生は、2004年では4.3人に1人であったのに対し、2014年には2.6人に1人に増えている。
また、昼間大学に通う学生の収入においても変化が見られている。1996年の大学生の収入のうち75.6%は家庭からの給付で奨学金による給付は5.7%であったが、2008年は家庭からの給付は65.9%・奨学金による給付は15.3%、2012年は家庭からの給付は60.8%・奨学金による給付は20.5%である。
家庭、つまり保護者からの資金援助は減少しており、学生本人が背負う借金となる奨学金によって生活が賄われるようになっていることが分かるのだ。
家庭からの援助が少なくなり、奨学金が増える。つまり卒業後に背負うことになる借金が増えている学生が多いと言えるだろう。もちろん、この統計はあくまでも平均値に過ぎない。まったく奨学金を受けずに卒業する学生がいる一方で、奨学金やアルバイトによる収入だけで生活費や学費等を賄う学生もいるのだ。
なぜ自己破産に陥ってしまうのか
日本学生支援機構が2016年3月に発表した資料「 日本学生支援機構について 」によると、平均給与が年々下がっているにも関わらず(1997年は約460~470万円であったのに対し、2012年は約410~420万円)、学費は国公立・私立ともに増え続けている。これでは、高い学費を使って卒業しても、奨学金を返すだけの余裕のある収入を得られないことにもなるだろう。
また、就職できない人や就職したとしても不安定かつ低収入な非正規就労になる人も少なくない。学生本人が卒業後に自己破産するだけでなく、自己破産することで連帯保証人である親権者が借金を背負うことになる例もあるのだ。60代、70代と言う高齢者であるにもかかわらず数百万円の負債を抱えてしまうことや保証人自身が自己破産しなくてはならなくなることも、奨学金の負のスパイラルに入ってしまえば決して特別なことではない。
破産する前にやるべきこと
自己破産すると、一定期間、住宅ローンや教育ローンなどが組めないだけでなく、所有する車などの財産も手放さなくてはならなくなる。また、連帯保証人を設定している場合は、連帯保証人が借金を肩代わりして支払い続けなくてはならなくなる。
自己破産は決して安易に選んで良い方法ではないということが分かるだろう。では、自己破産を避けるために、どのような方法を採ることができるのだろうか。
減額返還
日本学生支援機構の奨学金の場合、災害や経済的困難、傷病のために奨学金返還が難しいとき、一定期間、返済金を半額にしてその分、返済期間を延長することを願い出ることができる。
返還期限猶予
また、半額でも支払いが困難な場合は、一定期間、支払いを猶予してもらうこともできる。
連帯保証人が必要な奨学金の場合は、親権者などの人を立てるのではなく一定の保証料を支払うことで保証機関が連帯保証人になる「機関保証」を選択することもできる。途中で機関保証に変更できることもあるので、奨学金を利用している人は、保証人や返済規定を再確認することができるだろう。奨学金の返済猶予については「奨学金の返済期限猶予を解説」に詳しい。