ドル円予想レンジ 116.00- - 121.05

「現在の為替の水準も、確か、今年の2月頃の水準ですので、別に驚くような水準とも思っていません」-。これは12/20日銀金融政策決定会合後の黒田総裁の見解だ。

11月以降のドル高円安進行に関して、円安というよりもドル高とし、世界の主要通貨のうち先進国・途上国・新興国を問わず各通貨がドルに対して弱くなっているとの見方である。

要は“日本が恣意的に円を安くした訳ではない”と言外に示しているに等しい。ドル円予想をする上では、ここに極まりの観であり、水準感で推察するなら、2月の高値“121.50”から紐解いて120円±数円幅が許容価格帯とも読めるのだ。

黒田総裁が驚かない為替水準

今回の総裁会見で重要なポイントは1点。元財務官僚の黒田総裁が為替水準に敢えて言及したことだ。従前より為替政策は財務省管掌とした立場を斟酌し踏み込まなかった。では何故、今回は踏み込んだのか。

総裁の2018/4/8任期満了以降に2%の物価目標達成がズレ込んでいるとの見立ての中で、今般の円安は輸入価格の上昇となって物価上昇率全般を押し上げるからだ。笑みが絶えなかった会見模様を邪推するとまさに“トランプラリー様々”なのである。

黒田総裁が驚く為替水準

では、黒田見解の逆、つまり、“驚くような水準”とはどこか。筆者は2015/6/10の衆院財務金融委で「実質実効為替レートでは、かなり円安水準になっている」「実質実効為替レートがここまで来ているということは、ここからさらに実質実効為替レートが円安に振れるということは、普通に考えればありそうにない」と総裁自らが発言したことをヒントと考えている。

日銀公表データによると2015/6の実質実効為替レート(2010年=100)は67.85、直物為替レートでの東京市場ドル円最高値は125.28である。では直近はどうか。2016/11の実質実効為替レートは80.79、東京ドル円高値は113.90。対米ドル以外、他複数通貨と貿易額等も加味して相対的な通貨実力を算出しているため、特に米側からの非難に当たらない水準でもあり、まだ糊代があると読めるのだ。要は円独歩安で昨年6月時の実質実効為替レート67.85を下回れば、“驚くような水準”と筆者は考えるのである。

12/26週はクリスマスモード・年末時期であり大きな動意は予想していないが、突発的なリスク回避の円高には注意を要する。ドル円上値焦点は12/16高値118.435、12/15高値118.68、節目の119.00。超えれば2/3高値120.06、2/2高値121.05視野。下値焦点は12/21安値117.10、12/19安値116.50、12/14FOMC後、イエレン議長会見時の安値115.95を推考。下割れると12/13-14安値圏114.76-77からの上昇帯回帰を警戒している。

為替見通し

武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト