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(画像=Webサイトより)

婚活や男女の出会いにビジネスチャンスがあることはもはや常識だが、最近の出会いのトレンドのひとつに「相席居酒屋」があるのはご存じだろうか。

見ず知らずの男女が居酒屋でいきなり相席になって関係を構築するという斬新なスタイルだ。登場当初は浸透するのか懐疑的な部分もあったが、女性が飲食無料という、これまでの業界にはあり得ないお得感が追い風となって、一躍大ヒットとなった。

そこで加熱する相席ビジネスにクローズアップしてみる。

“相席”ビジネスを確立し、市場をけん引する「相席屋」

“相席”に着目し、ビジネスモデルとしてスタートさせたのが婚活応援酒場「相席屋」だ。2014年3月に東京・赤羽に第1号店がオープン。2015年には60店舗に増え、2016年現在で全国71店舗あり、海外にはグアムに支店がある。わずか2年で急速に店舗拡大しており、100店舗突破もそう遠くはないという。店舗によっては混雑し、入店に待ち時間もあるほどの人気だとか。

相席屋のルールは同性2人以上で入店すること。マッチング効率をあげるため1人での入店はできない。男性は30分1500円で食べ飲み放題(金・土・祝前日は1800円)。その後は10分ごとに500円がかかる。女性は時間無制限で飲んでも食べても無料だ。相席相手が気に入らなければ席替え希望をお願いすることもできる、男性は滞在時間が長ければ長いほどお金がかかるので60分以内で気が合う相手を見つけ、グループで別の店に移動する、というスタイルが多いという。

女性無料という画期的な点が話題となり、収入が高くない若い世代を中心に大人気となった。婚活したいけど結婚相談所や婚活パーティはハードルや費用が高いと敬遠していた層を一気に惹きつけることに成功した。

店舗全体の月間利用者数は合計20万人超、累計マッチング数は約250万件の実績がある。公式サイトには相席屋での出会いがきっかけで結婚にいたるカップルの声も多数紹介されており、婚活としても一定の効果があると言えるのだろう。

最近では年齢的に入店を躊躇している大人の男女の要望を受け、年齢層を30歳以上に限定した「相席屋R30」の店舗も増えており、婚活したいけど必死なのは見せたくない微妙な30代以上の女性を中心にうけている。

同じ業態の飲食店が続々オープン

相席屋のヒットを受け、同様の相席システムを取り入れた居酒屋がその後、次々と誕生した。「駄菓子居酒屋縁日」「相席BAR」「相席酒場」「相席処縁むすび」「相席居酒屋乾杯亭」「相乗屋」など、どの店も「相席」という名の付く店舗ばかりだ。

出会いが少ないと言われる地方にもそのブームは波及しており、全国各地に店舗展開する相席屋だけでなく、地方地盤の相席居酒屋も急増している。

たとえば群馬の「相席本舗」、大阪の「相席ダイニング」、名古屋の「相席空間」や「相飲み屋」など。居酒屋形態がほとんどだが、ユニークなところでは石川・金沢の「相席串揚げあげあげ」や神戸の「相席カフェ」、都心にはラグジュアリーなラウンジスタイルもあり、新しいスタイルの相席店が登場している。

カフェスタイルの相席も登場

「ロハス銀座」はランチ、カフェ、ディナーと時間帯によってメニューや金額を変わるスタイリッシュな相席カフェ。最大の特徴は30分毎に男性が席を移動するルーレット式チェンジシステムだ。気に入った相手と相席になったら30分以内に連絡先を交換しなければならない。

また来店客は目的に応じてリストバンドを着用するのもユニークだ。レッドは婚活、ピンクは恋人募集、ブルーは友達作り、イエローは合コン仲間探しと、ひと目で来店の目的がわかるので、男女の目的相違によるすれ違いも防げ。

利用料金は男性の場合、1人参加で1時間2500円、女性は600円と設定されている。昼間のカフェタイムには本格エスプレッソやケーキなどが揃っていて、カフェに行く感覚で気軽に利用できる。夜は本格イタリアンとなり、女性は無料となる。時間帯によって客層も雰囲気も変わるという。

続々誕生している相席系飲食店、共通しているのはどこも女性は無料、もしくは無料に近いような低価格で設定されている点だ。ハードルを低くして女性客を誘引し、安定的に女性を滞在させることで男性客も呼べ、結果、客数を伸ばせて利益確保につながるビジネスモデルとなっている。入店時の身分証明書確認や、アプリで現在の空席状況などがリアルタイムでチェックできるなど、市場拡大に伴いより安全性や利便性も高くなっている。

相席屋誕生のきっかけは「街コン」

これほどまでの「相席」ブームを創出した相席屋。運営するセクションエイトが相席屋をオープンするにあたって着目したのが「街コン」ブームだという。街コンとは街ぐるみで行われる大型の合コンイベントだ。

参加者は少ない場合でも100人ほど、多いものでは何千人という規模もある。同性2人以上で1組になり、開催地の設定された飲食店をまわっていく。婚活ブームに伴い、もっと気軽に男女の出会いを創出するという目的で生まれ、地域活性という側面もあり、各地でブームとなった。

2012年には流行語大賞にもノミネートされるほど盛り上がったが、街コンも今は変化して「ペット」「スポーツ」「アウトドア」「アニメ」など共通の趣味を持つ同士で交流する「趣味コン」が増えている。SNSの台頭で出会いや交流がより専門化していったといえる。

街コンや趣味コンによって、見ず知らずの人と交流するのに抵抗がなくなった人が増えたが、イベントなので開催日が限られる。そこでもっと日常的に街コンのようにカジュアルに男女が出会える場があれば、ということで相席居酒屋誕生につながっ。

とはいえ流行の移り変わりが早いのが出会いや婚活ビジネス。相席スタイルの店が急増したことで競争も激化し、タダ飯目的で通う女性なども増え、今後さらなる爆発的な市場成長は難しいかもしれない。趣味コンのように専門性を打ち出すなど、相席ビジネスにもそろそろ新たな一手が求められるだろう。(高橋みるか、編集・ライター)