経営者や管理職たるもの、業務の改善のために部下を叱らなければならないシーンは必ずある。
しかし、部下を怒りすぎて後悔したことはないだろうか。「怒鳴ってスッキリ」とはならないはずだ。怒られた部下も、萎縮したりすねてみたりと、良いほうに向かわないこともあるだろう。さらに、悪い感情へと向くと、パワハラで訴えられるという騒動にもなりかねないのだ。
このようなことを防ぐために、上手な叱り方と怒りをコントロールする方法を考えてみよう。
上手に怒りと付き合うために
「叱る」と「怒る」は似ているようで違う。「叱る」は相手への指導であり正しく導くためのもの、「怒る」はカッとなった自分の気持ちをぶつけるものだ。前者はまず他人ありきであり、後者は自分のためにやっていることなので、怒りをぶつけてみても相手はよい感情を得られない。
しかし、経営者も上司も人間であり、怒りの感情が湧く場合もある。そのようなときに役に立つテクニックが「アンガーマネジメント」だ。以下、アンガーマネジメントによる心を落ち着かせる方法を紹介する。
・ 深呼吸をする
昔から言われる方法だが、実際にやってみると実に効果がある。腹式呼吸でゆっくり数を数えながら深呼吸。1回10秒ほどで吐く、吸う、を繰り返す。腹式呼吸は、脳からα波が出ることでリラックスができる呼吸法だ。
・ イライラを書き出す
最近イライラしたこと、腹が立ったことを紙に書き出してみよう。いつ、どこで、どんなことが起こったのか、それに対してどう感じたのか。自分の正直な気持ち、怒りの強さを10段階で表す(スケールテクニック)とどれくらいか。また、その出来事が起こった結果どうなったか。このようなことを「アンガーログ」として記録に残す。これを繰り返すと、どんな時に怒りが湧くかのパターンが見えてくる。自分の行動を客観的に見ることができ、さらに、どのように行動をすることがベストだったか分かるようになる。
・ その場を離れる
冷静になるために一番簡単な方法だ。その場から離れることで、気持ちを切り替えられる。すこし距離を置いて自分が快適と思えるもの、深呼吸やストレッチ、お茶を飲むなどして心を落ち着けてから、その場に戻ろう。
・ 誰かになりきってみる
好きな人、尊敬する人であれば、この場をどのように対処するかを考えてその行動を真似してみる。なりきる人はテレビドラマの俳優、スポーツ選手、身近にいる人など誰でもいい。なるべく具体的にイメージして、興味がある誰かになりきることで怒りに対処しようという方法だ。
・ 怒りのピークは最初の6秒
一瞬で頭が真っ白になるほどの怒りを感じる時があるかもしれない。しかし、怒りのピークというのは、最初の6秒間なのだそうだ。たとえば、数字を数える、身の回りのものを細かく観察するなどして、6秒間を乗り切ることが肝心だ。
尊敬・信頼できるリーダーとは
ある大学の調査によると「威圧的な上司の元で働く部下は、そうでない上司の元で働く部下よりも、業務に全力を出さない割合が24%も高いという研究結果も出ています」とある。(日本アンガーマネジメント協会ホームページより)
怒りの感情を職場で表すと、労働生産性も落ち、最悪の場合は退職するということになってしまう。
アンガーマネジメントというのは、単に怒らないというだけでなく、よりよい人間関係を築くための教育であり、テクニックだ。部下とよい関係を築いていけると、職場は働きやすい環境となっていく。
怒りのコントロールにはさまざまな方法があるが、全てをやってみる必要はない。自分に合うと思ったものを一つ、もしくは幾つかを組み合わせてもよい。上手に怒りをコントロールすること、は自分の成長にもつながる。
常に冷静でぶれることのないリーダーというのは、誰が見ても憧れるものだ。信頼されるリーダーとなるために、カッとなった時に心を落ち着ける技術を身につけてみよう。(提供: 百計オンライン )
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