最近の金融マーケット
ここ数ヵ月の金融市場を概観すると、中国人民銀行が基準金利の調整を見送り金融緩和環境を維持する中で、株価は戻り高値を試す展開、人民元は米ドルに対し下値余地を試す展開、住宅価格は最高値を更新する展開となっている。まず、基準金利に焦点を当てると、中国人民銀行は昨年10月に貸出・預金の基準金利を引き下げて以降、今年は利上げも利下げも実施していない。今年初めには景気が下振れしたため市場では利下げ期待が高まったが、消費者物価が上昇率を高め、住宅価格が上昇の勢いを増す中で、基準金利は現在に到るまで横ばいである(図表-1)。
次に、株式市場に焦点を当てると、昨年前半に急騰した上海総合は6月12日をピークに急落、今年初めにも景気が下振れしたため再び急落した。その後、中国政府がインフラ投資を加速させたことで景気失速懸念は後退、1月28日をボトムに一進一退ながらも戻り高値を試す展開となっている(図表-2)。
他方、為替市場に目を転じると、昨年8月には人民元の米ドルに対する基準値が3日間で約4.5%下落(市場実勢の下落は約3%)、その後も下値余地を試す展開が続いている(図表-3)。その背景には米利上げに伴う米ドルへの資金還流があり、中国から見れば資金流出がある。米国で景気指標が改善し利上げの可能性が高まれば米ドル全面高となって人民元も下落、米国で景気指標が悪化し米ドル高修正の局面を迎えれば人民元も小反発するという動きが繰り返された。
一方、住宅市場では今年7月に2014年4月に付けた前回高値を上回りその後も最高値更新が続いている(図表-4)。高騰の目立っていた深?市や上海市などではバブル懸念が高まり、中国政府はその退治に乗り出した。
景気10指標の点検
◆供給面の3指標
【工業生産】
景気指標の中でGDPへの影響が最も大きいのが工業生産(実質付加価値ベース、一定規模以上)である。ここもとの経済のサービス化で影響度が落ちたとはいえ、依然その有効性は高い。10-11月期の工業生産は前年同期比6.0%増(推定(1))と、7-9月期の同6.0%増(推定)と同水準である。12月の動きは未反映ながらも、既に公表された工業生産を見る限り、10-12月期の成長率は前四半期と同程度となる可能性が高いことを示唆している(図表-5)。
【製造業PMI】
製造業の動向を示す代表指標が製造業PMI(購買担当者景気指数、中国国家統計局)である。これは製造業3000社の購買担当者へのアンケート調査を元に計算されるもので、通常は50%が拡張・収縮の分岐点とされる。ここもとは10月51.2%、11月51.7%と急回復、7-9月期の平均(50.2%)を大きく上回っており、製造業は10-12月期の成長率を押し上げる要因となりそうだ。但し、将来3ヵ月の予想を示す予想指数は55.5%と低下、今後にやや不安を残した(図表-6)。
【非製造業PMI】
一方、非製造業の動向を示す代表指標が非製造業PMI(商務活動指数、中国国家統計局)である。中国では製造業からサービス業への構造転換が進行中なため重要性が増している。製造業PMIと同様に50%が拡張・収縮の分岐点とされる。ここもとは10月54.0%、11月54.7%と上昇、7-9月期の平均(53.7%)を上回り、非製造業は10-12月期の成長率を押し上げる要因となりそうだ。また、同予想指数も60%台と高水準にある(図表-7)。
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(1)中国では、統計方法の改定時に新基準で計測した過去の数値を公表しない場合が多く、また1月からの年度累計で公表される統計も多い。本稿では、四半期毎の伸びを見るためなどの目的で、ニッセイ基礎研究所で中国国家統計局などが公表したデータを元に推定した数値を掲載している。またその場合には“(推定)”と付して公表された数値と区別している。
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