◆需要面の3指標
【小売売上高】
個人消費の動きを示す代表指標が小売売上高である。1-11月期の小売売上高は前年同期比10.4%増と昨年通期の同10.7%増をやや下回っている。内訳を見ると、殆どの業種で昨年通期の伸びを下回ったが、自動車は伸びを高めた(図表-8)。足元の10月は前年同月比10.0%増、11月は同10.8%増と、7-9月期の前年同期比10.5%増(推定)とほぼ同水準である。但し、インフレ率が上昇したため価格要因を除いた実質では10-11月期は前年同期比9.0%増(推定)と7-9月期の同9.9%増(推定)を下回り、個人消費は10-12月期の成長率を押し下げる要因となりそうだ。
【固定資産投資】
投資の動きを示す代表指標が固定資産投資(除く農家の投資)である。1-11月期の固定資産投資は前年同期比8.3%増と昨年通期の同10.0%増を大きく下回っている。内訳を見ると、製造業の伸びは引き続き鈍化したものの、インフラ関連や不動産業が伸びを高めた(図表-9)。足元の10-11月期は前年同期比8.7%増(推定)と7-9月期の同6.6%増(推定)を上回っており、投資は10-12月期の成長率を押し上げる要因となりそうだ。
【輸出】
世界の工場といわれる中国では輸出需要が生産動向を大きく左右する。1-11月期の輸出額(ドルベース)は前年同期比7.5%減と昨年通期の同2.9%減に続いて2年連続の前年割れとなっている。内訳を見ると、米国向けが同6.6%減、欧州EU向けも同4.4%減となるなど軒並み減少している。足元の10-11月期は前年同期比3.6%減と7-9月期の同6.7%減よりマイナス幅を縮めた。しかし、輸入額も同2.8%増と7-9月期の同4.6%減からプラスに転じており、ネットした貿易黒字は減少傾向にある。純輸出は10-12月期の成長率を押し下げる要因となりそうだ。但し、輸出の先行指標には底打ちの兆しでてきている(図表-10)。
◆その他の重要な4指標
【電力消費量】
その他の指標では電力消費量が注目される。今年1-11月期は前年同期比5.0%増と昨年通期の同1.0%増から伸びが回復してきた。第2次産業は、昨年はゼロ%前後で一進一退だったが、今年に入り緩やかながら回復傾向が続いている。第3次産業も高い伸びを維持している(図表-11)。
【貨物輸送量】
貨物輸送量も重要な指標である。今年1-11月期は前年同期比4.8%増と昨年通期の同4.4%増を若干上回る伸びを示している。内訳を見ると、鉄道貨物は同1.8%減とマイナス幅を大幅に縮めたものの、貨物輸送量の4分の3を占める道路貨物が同5.7%増と昨年通期の伸びを0.7ポイント下回っており、水路貨物と航空貨物も昨年通期の伸びを下回る伸びに留まっている(図表-12)。
【工業生産者出荷価格】
景気の体温と言われる物価も重要な景気指標である。今年11月の工業生産者出荷価格は前年同月比3.3%上昇と約4年半に及ぶ下落に歯止めが掛かった。原油などの上昇を受けて生産財が急上昇したほか消費財も上昇に転じており、今後は消費者物価にも上昇圧力が及びそうだ(図表-13)。
【通貨供給量(M2)】
金融面から景気を見る代表指標としては通貨供給量(M2)が挙げられる。ここもとの動きを見ると、11月は前年同月比11.4%増と「13%前後」とされた2016年の政府見通しを大きく下回っている(図表-14)。しかし、融資サイドから見ると、投資に結び付くことの多い中長期融資は11月も同18.0%増と高い伸びを維持しており、景気への悪影響は限定的と思われる。