日常生活に欠かせない存在と言っても大げさではないコンビニエンスストア。2016年秋には、店舗数で業界3位だったファミリーマートが同4位のサークルKサンクスと経営統合し、業界再編が起きた。

この統合により、店舗数ではローソン <2651> を抜いてトップのセブン-イレブンに次ぐ規模となり、コンビニ業界の2番手を巡る熾烈な戦いが幕を開けた。

店舗数で引き離すも売上高の相乗効果は限定的

コンビニ業界は、セブン-イレブンが1万9166店舗(16年11月末時点)を構え、数の上では ローソンの1万2839店舗(同)を大きく上回る独走状態だった。そこに割って入ろうとしたのが、今回の業界再編で、ローソンより少なかったファミリーマートの店舗は、一気に1万8140店舗(同)まで拡大し、店舗数ではセブン-イレブンに肉薄した。

店舗数だけを見れば、セブン-イレブンとファミリーマートの2強時代に突入し、ローソンが後を追いかけるような構図となる。しかし、その他の業績に着目すると、そう単純な2トップ体制とはいかない。

まず売上高をみると、2016年2月期の実績では、セブン-イレブンは7936億円に上る。一方、同期の統合前のファミリーマートは3258億円、サークルKは1563億円で、2つのコンビニを合わせてもトップのセブン-イレブンの6割程度にとどまる。この時期、店舗数では2位だったローソンの売上高は、3338億円。店舗数ではセブン-イレブンと肩を並べたファミリーマートだが、売上に関してはまだまだ水をあけられた状態だ。

ファミマ、統合で1店舗の「1日あたり売上」下落

さらに、コンビニ各店舗の1日当たりの売上に着目すると、そこにもまだ大きな差がある。平均日販とも呼ばれるデータで、業界首位のセブン-イレブンは65万6000円に達するが、ファミリーマートは51万6000円にとどまる。この数字は、ローソンの54万円も下回る。統合による相乗効果を図りたいところだが、新たなパートナーとなったサークルKの平均日販は43万1000円と50万円を切る水準にとどまる。単純に計算すれば、統合後のファミリーマートの平均日販の数字は下がり、ローソンとの差が拡大することを意味する。

これまでの平均日販のデータの実績は、店舗数が多いコンビニほど高い数字を残す傾向があった。店舗数でローソンを抜き2位となったファミリーマートだが、各店舗の稼ぐ力は、ローソンに引けを取り、業界3位に甘んじてしまう。ローソンとの競争に勝ち、セブン-イレブンとの一騎打ちに持ち込むためには、平均日販をいかに上げていくかが課題として残る。

1品買い足しのヒット商品がカギ

ファミリーマートの店舗が、セブン-イレブン、ローソンの店舗に稼ぐ力で差をつけられているのはなぜか。

セブン―イレブンを訪れる客数は1日約1000人で、各店舗の平均日販(65万6000円)から平均客単価は656円となる。一方のファミリーマートのマニュアルリポート2016によると、1日の平均客数は914人で、客単価は565円だ。セブン―イレブンを訪れた客はファミリーマートの客より85円多く消費する計算となる。客単価でみれば、わずかな印象を受けるが、毎日1000人規模の来客者があるコンビニ業界では、この僅差が勝敗を分ける。

同じような店舗を営むコンビニ各社だが、類似した商品でも少し値段の張る高価格帯のラインナップを展開したり、スイーツなどを充実させたりすることで、もう1品買い足しを促進させることで差別化を図っている。

実際に、コンビニ業界をけん引するセブン-イレブンは、セブン&アイ・ホールディングス <3382> のプライベートブランドであるセブンプレミアムの商品で、惣菜やスイーツなどの商品を充実させるほか、ワンランク上の味を提供するセブンゴールドシリーズも好調で、通常商品より価格が高めに設定されているが、食パンやビーフシチューなどが人気を呼び、客単価のアップに寄与する。

また、ローソンは大ヒットとなったプレミアムロールケーキをはじめ、「ウチカフェスイーツ」のラインナップを揃え、客のもう1品買いを促進することで、平均日販の数値を上げている。

業界再編によって店舗数では2位に上り詰めたファミリーマートだが、トップを行くセブン-イレブンの背中はまだ遠く、追い越したローソンには平均日販売で差をつけられているのが現状だ。もう1品、客が手を伸ばしたくなるようなヒット商品を生み出すことができるかが、ローソンとの差を埋め、セブン-イレブンへの挑戦の鍵となりそうだ。コンビニ業界は、番手競争が繰り広げられる中、3強時代の熾烈な競争が繰り広げられていきそうだ。(ZUU online 編集部)