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求められる非資源シフトの戦略

総合商社の正念場「勝ち組」と「負け組」の差とは?

総合商社,資源価格
(写真=Thinkstock/Getty Images)

原油と資源価格の下落を受け、2016年3月期の純利益による5大商社ランキングは前年と大きく順位が変動した。三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、丸紅、住友商事という順だったのが、伊藤忠商事、住友商事、丸紅、双日、三井物産、三菱商事という並びに。

中国などの新興国経済の減速を背景に、資源エネルギー市況の低迷が続く中、収益に占めるそれらの割合が高い三井物産と三菱商事の転落ぶりが際立つこととなった。一方、繊維や食品、機械など非資源分野に強い伊藤忠商事は初の業界首位に躍り出た。勝ち負けの明暗を分けた資源ビジネスについて、考えてみたい。

商社をめぐるこの20年間の環境

商社をめぐるこの20年の環境をざっとおさらいしておこう。1990年代のバブル崩壊以降、商社は不良資産を抱え込んで経営が悪化し、いわゆる「冬の時代」を迎えた。経営改革や不良資産処理の断行、事業投資モデルの転換と業界再編で乗り切った。

21世紀に入り、リーマンショックによる世界同時不況という大きな出来事があったにもかかわらず、商社の業績は過去のバブル期のような打撃は受けなかった。それどころか、「夏の時代」とも呼ばれた。それは、中国など新興国の経済発展が進み、鉄鉱石や石炭、銅、天然ガスなどの資源エネルギー需要が拡大したため、この分野での投資を積極的に行ったためだ。

ところが、2014年後半、原油相場は急落。さらに金属価格も下がりはじめ、各社とも巨額の損失を計上することになった。同年度における5大総合商社の純利益合算値は1兆0399億円と前期比25%も減ってしまった。住友商事は16期ぶりに最終赤字に転落。一方、「非資源商社No.1」を標榜する伊藤忠商事はあまり影響を受けず、2位の三井物産に迫った。

経済界に大きな衝撃 物産、商事が創業以来の赤字

住友商事はこの年、資源分野で他社とはけた違いの2021億円の赤字を出した。これは、アジア企業としては最も早く現地企業とパートナーを組んで参入したシェールガス開発の失敗が大きい。中村邦晴社長は週刊エコノミストのサイトに掲載されたインタビューで「価格が上がって、落ちたところで、また戻るであろうというところで買った。上がりのところで買ったりした。将来価格の見方が、もう少しこれぐらいのレベルで推移するだろうと」と高値買いを認めた。

住友商事が出した流れは2016年3月期、三井物産と三菱商事が引き継いだことになる。しかも両社とも、創業以来の赤字となってしまい、経済界に大きな衝撃が走った。

16年3月期の連結最終損益は三菱商事は1493億円の赤字。前期は4005億円の黒字だっただけにその落差に驚く。三井物産は同843億円の赤字。同じく前期は3064億円の黒字だった。三井物産の松原圭吾CFOは3月の決算会見で「中国の景気減速を震源とした混乱は非常に激しいインパクト」、三井物産の安永竜夫社長も「大変重く受け止めている。08年以降、中国で生まれた資源需要の山があまりにも大きかったため、反動がかつてなく大きくなった」と苦い表情を浮かべた。

両社にとって、最も痛手となった案件は、2011年に三菱商事が日本円で4200億円と巨額を投じて24.5%を取得し、現在は両社が出資するチリの銅事業アングロ・アメリカン・スール(AAS)だ。中長期の銅価格見通しを引き下げたことで、三菱商事が2800億円、三井物産が900億円の減損を迫られることとなった。

こうした事態を受け、両社は非資源ビジネスの強化で立て直しを急ぐ方針だ。三菱商事の小林健前社長は3月の決算会見で「食料や消費者により近い生活関連を強化する」と強調。三井物産も食料やアジアの病院事業などを強化する。

伊藤忠「非資源商社No.1」掲げ成果に繋がる

一方の伊藤忠商事。同社は「非資源商社No.1」を掲げる岡藤正広社長のリーダーシップによる果敢なビジネス展開が成果を残した。住友商事が赤字に転落した2015年3月期の純利益は前年比22.5%アップの3005億円をたたき出した。アパレル分野では繊維では国内最大手のジーンズメーカー「エドウィングループ」を子会社化。

食品分野ではバナナとパイナップルでは世界最大クラスの販売量、加工食品では北米でトップシェアの「Dole社」を買収した。海外展開でも、タイの財閥系企業「チャロン・ポカパン」と組み、中国の複合企業「中国中信集団(CITIC)」に1.2兆円の巨額投資を実施。中国、アジアの新興国での事業展開を拡大した。

2016年11月2日に発表した2016年4〜9月期の連結決算は純利益が前年同期比5%減の2021億円。資源分野は353億円の減益となったが、非資源分野は291億円の増益と好調。17年3月期の純利益予想は前期比46%増の3500億円に据え置き、金属部門は130億円から300億円に上方修正した。

鉢村剛最高財務責任者は同日の記者会見で自社の強みの非資源分野について「各セグメントで好調な分野がある。住生活部門では海外のパルプ市況は悪いが、伊藤忠都市開発の不動産が好調。機械分野では円高や船舶は不調だが、自動車、プラント、建機でカバーできる」としている。

商社の正念場、引き続き「非資源シフト」求められる

ただ、非資源分野も万全ではない。たとえば、三菱商事が2014年に1500億円で買収したノルウェーのサケ養殖会社での利益を期待していたが、ロシアの需要減と天然魚の豊漁などで市況が低迷し、赤字になった。米穀物会社を買収した丸紅、ブラジルの農業子会社を買収した三井物産、米青果物大手ドール・フード。カンパニーからアジア事業を買った伊藤忠商事、オーストラリアの穀物会社を完全子会社にした住友商事のいずれも88億〜480億円の減損となった。

とはいうものの、商社が成長戦略で乗り込んだ資源バブルというバスはすでに停車している。いかに早く下車して非資源シフトの戦略を立てられるか、正念場を迎えている。(飛鳥一咲 フリーライター)

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