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スマートフォン向けチャットアプリ「微信(ウェイシン)=英語名WeChat」を展開する中国最大手のインターネット会社テンセントの第1四半期の決算が公開されました。売上高は184億元で前年同期の135億元から増加し、純利益ベースで見ると前年同期比で60%増の64億6000万元(10億4000万ドル)となっています。中国IT御三家の一角、テンセントのその原動力とは何なのでしょうか。


スマートフォン向けゲーム部門の売上げが要因

第1四半期の決算において、利益率は2011年第1四半期以来の高い水準となりました。果たしてこの利益率の高さは何が要因なのでしょうか。テンセントの売上高を押し上げているのは、スマートフォン向けのゲーム部門の売上増です。テンセントが提供しているサービスはモバイル向けチャットアプリ「微信(ウェイシン)=英語名WeChat」を利用してゲームの配信を行い、ゲーム事業の統括部門の売上は35%増となっているのです。スマートフォンが登場して移行、コンテンツによる収益はアプリが主戦場となっています。各社ともプラットフォーマーになるべく、様々なサービスを展開していますが、実は何処で収益を上げるか?という出口の問題においては、ほぼ広告かゲームによるユーザーへの直接課金しかないのです。

しかも、広告についてはFacebookのように利用者のデモグラフィック(サービス利用者の年齢や性別、居住地といった情報)を所有していなければターゲティング配信が行えないため、広告の費用効果が下がります。さらに、そもそも広告よりはユーザーへの直接課金の方が高利益率になりますから、自社のプラットフォームを築いた上でその会員資産を利用してゲームによる課金収益で売上げを伸ばしているのです。一昔前にモバゲーやグリーが携帯向けゲームで高い利益率を叩き出していましたが、スマートフォン向けのゲームは利益率が5割を超えることもある旨味のあるビジネスモデルなのです。


中国のお家事情が国内企業にプラスに働く

2000年代後半くらいに日本国内において「タイムマシン経営は終わった」というキーワードが聞かれるようになりました。それまで、日本は米国で流行したウェブトレンドを国内にて焼き直してリリースすることで国内のシェアを拡大させてきました。古くはホームページやウェブブログなど、米国で爆発的に広まったサービスを日本版に焼き直ししてきたのです。しかし、今日ではグローバル企業はそのまま自国で展開するサービスを他国に持ち出します。Facebookでもそうですし、Twitterもそうでしょう。故に、数年前に米国で流行った技術やトレンドを導入する「タイムマシン方式の経営は終わった」と言われているのです。

しかし、中国では未だにタイムマシン経営が有効です。大きな理由のひとつは、中国政府が海外のインターネットサービスを規制していることにより、海外で流行しているサービスを自国向けに焼き直すことが出来るのです。中国ではFacebookを使うことは出来ません。Twitterもありませんが、Twitterを中国向けに焼き直した微博(ウェイボー)は5億人ものユーザーを抱えています。中国はユーザー数が多いので、国内のみで展開したとしても、十分な規模に達する事が出来るのです。