サムスン電子に不満をぶつける投資家

「山が高い程風当たりが強い」が浮世の常ですが、サムスンに対する投資家は「利益が○兆ウォンで過去最高に達した」という業績発表だけでは物足りなくなっているのです。その理由は簡単です。日本の勝ち組企業に彼らは目を奪われているからです。例えば、複合機分野では、トップのキャノンに次いでリコーと続き、富士ゼロックスといった具合に日本勢が独占しておりますし、日本に取っても自動車と並んで数少ない製造業の「勝ち残り組」企業となっています。

彼ら投資家に言わせれば、今のサムスンは「未来の成長分野が見えない」・「スマホ市場は飽和したのではないか」・「ディスプレー事業での投資が巨額すぎる」・「中国市場で苦戦している」・「配当が少ない」・「支配構造を改善せよ」・「経営者の顔が見えない」・・・・等々、内部から不満が出て来ていたのです!。

以前、13年11月6日、ソウル中心部に近いホテル新羅で、サムスン電子が8年ぶりに大規模IR説明会を開催したのを覚えている方もいると思います。開催した理由はサムスンが置かれている評判の悪さを払しょくする為、過去の栄光を説明をしたにすぎないのですが、サムスン電子の快進撃が止まらないことを並べ立てたわけです。

2013年4〜6月期の連結営業利益は9兆5000億ウォン(約8300億円)とか、前年同期に比べ47%増えた。あるいは過去最高だった12年10〜12月期の8兆8400億ウォンを大きく上回り、2四半期ぶりに記録を更新したとか、4月に発売したスマートフォンは、世界販売2000万台を突破といった派手な成果を説明をしたのですが、しかし、その決算発表日の終値は前日比で3.8%急落したたばかりか、営業利益の水準が、市場予想の10兆2187億ウォン(約8970億円)に届かなかったのです。


人材や技術獲得で活路を見出す作戦

サムスンは、「スマホ」からの脱却こそが今の最大の経営課題だと言われております。悩んだ先が、日本の得意分野である「複合機」にあったのです。早速、韓国の得意とする買収作戦に出たのですが、技術や人材を求めた先が、シャープだったと言うわけです。サムスンはシャープに104億円を投じてシャープ株の3%を取得するのですが、中味はシャープの資金難に乗じてテレビ向けの大型液晶パネルを安く調達するというものであり、本音は「シャープの複合機の取り扱い」に的をしぼった戦略でもあったのです。赤字のシャープは、複合機事業だけは白物家電に次ぐ利益を堅実に確保していたからです。

サムスンは、スマホなどのIM事業に次ぐ成長分野として、昨年に欧米などへ、複合機事業に本格参入したのですが、シェアはまだ1〜2%でしかありません。御存知のように「複合機」は一度購入しますと、トナー販売やアフターセールスなど息長く企業との付き合いが出来るのです。売り込んでしまえば、後はこっちの物となり、「安定した利益を確保できる」とサムスン幹部は熱い視線をシャープに注いでいたのです(例えばA3用紙を高速で処理する高級分野の技術など)。シャープにとっては、「虎の子の事業売却に反対」という幹部もいるのですが、新興国に対する「シャープの販売体制は不十分」・「資金不足」・「あるいは国内メーカーとの戦いだけでも競争が激しい」となると今後の対応が待たれます。


第3のOS「タイゼン」がカギ

日本企業に有力な引き受け手がない中で、シャープがサムスン電子と組むことは、さまざまな事業分野で効果があることは事実です。サムスンの幹部は「複合機の分野」も含め、シャープを飲み込む戦略が生き残る選択肢の一つですし、今注目しているのは、第3のOS「タイゼン」です。グーグルの「アンドロイド」、アップルの「iOS」に次ぐ「第3のOS」と呼ばれる「タイゼン」なのです。では何故サムスンが注目しているかと言えば、「タイゼン」は仕様公開の度合いが大きい上に、サムスンが開発に参加して改良していけるという条件が整っているからなのです。要するに「端末やサービス開発の自由度が高い」のです。

問題は、NTTドコモは当初、タイゼン搭載のスマートフォンを発売する予定だったのを延期させ、「当面見送り」になったことです。このタイゼンは、グーグルの「アンドロイド」、アップルの「iOS」に対抗するOS (基本ソフト)なのですが、今後にまだ疑問が残るので、決めかねているのが現状なのです。サムスンは、いわゆる、スマートフォンとか、タブレットやスマートテレビ、あるいはPCといった各種スマートデバイスへの搭載を目指すことで、IT業界の主導権がアップルやグーグルに寡占化する流れを大きく変えようとする戦略なわけですから、"第3勢力"を目指しているのです。シャープにとっても「タイゼン」陣営に就くことは大きなメリットを持つのですが、サムスンの株主は国外が約半分を占めている現状からすると、サムスン幹部だけでは決められない悩ましいデリケートな問題なのです。

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