ホンダ(本田技研工業 <7267> )は国内の二輪販売網を再構築し、現在5通りの販売体制を2018年4月から、「Honda Dream(ホンダドリーム)」と「Honda Commuter(ホンダコミューター)」の2チャネル体制へと変更する。その背景にあるのは国内の二輪車市場の冷え込みがあると見られる。
排気量別に分けられた販売体制
現在、ホンダの国内二輪販売は5通りだ。二輪車のフルラインアップを取り扱う「Honda DREAM(ホンダドリーム)」、「PRO'S WING(プロスウイング)」、「PRO'S(プロス)」の3販売体制と、Honda二輪車の250cc以下のモデルを取り扱う「Honda WING(ホンダウイング)」、「Honda(ホンダ)」となっている。
この販売体制を再編し、Honda DreamとHonda Commuterの2チャネル体制に移行するが、Honda Dreamではスポーツモデルを中心に二輪車のフルラインアップを取り扱い、ライフスタイルの提案や高品位なサービスを提供する。
そしてもう一つのHonda Commuterは、250cc以下のコミューターモデルを中心に取り扱い、地域に根差し生活に密着した利便性の高い商品と信頼のサービスを提供する。今回の販売チャネルの刷新により、スポーツモデルとコミューターモデルそれぞれのお客様ニーズに的確に応えられる販売網の構築を目指すという。
これにより全5500拠点数は変わらないが、その内訳が大きく変わることになる。これまでは、最も多かった4589拠点のホンダとそれ以外の4拠点の合計が911拠点という構成だったが、今回の新販売チャネルでは、Honda Dreamが150拠点、残る5350拠点はすべてHonda Commuterになるということだ。
全国どこでも変わらないサービスが受けられるようになるとともに、そして数少ないホンダドリームでは高額な商品も取り扱うので、差別化も図られることになるだろう。
厳しい二輪の国内販売
そもそも事業がうまくいっているのであれば、同じやり方のままで販売店の数を増やすなどという方法があるのだろう。今回体制変更をする背景には、日本の二輪の国内市場が冷え込んでいることがあるだろう。
2014年度のグローバル販売台数は1759万台であったのが2015年では1705万台となりマイナス3.1%の減少になっている。地域的には、パキスタンやフィリピンでは増加したがブラジルと中国は減少した。
そして2輪事業における営業利益率の悪化も影響しているのではないかと思う。2015年度第4四半期の決算では通常10%前後だった営業利益が、第4四半期で6.3%と大幅に落ち込んでしまった。この要因についてホンダ側では、台数変動や構成差、為替の影響が見てとれると出張している。幸いにして直近の四半期決算では10%程度に戻っているのだが、この中で日本市場では商品の構成要素について企画面から考え直すとうのが、今回の再編にも繋がったのではないだろうか。
日本の2輪車ユーザー(ライダー)も減少してきている。国内では過去最高320万台を販売したこともあった二輪車業界だったが、2006年70万台程の新車販売が行われていた。さらに、リーマンショックを境に二輪車の販売は急激に落ち込み、その半分の35万台ほどになってしまった。その後も以前の水準に戻ることはなく、2015年の販売台数は37万台とほぼリーマンショック後の水準に戻ってしまっている。
2015年の決算で出した販売台数の2016年度の見通しは合計で7.7%の増加と見込んでいるということであった。だがそのほとんどは、日本を除くアジアであり、日本では-30,000台と、減少を想定している。
二輪車の保有台数も2006年に1300万台ほどあったが徐々に減ってきており、2015年では1200万台を割ってしまっている。これは、何らかの事情で二輪を手放す人が増えてきており、その代わりに参入してくる人数が少ないということを表している。
免許取得をする人の数も新規に免許取得をする数が2012年は27000人いたが、2015年には25000人に減っている。だが内訳を見ると、微増ではあるが、大型2輪の免許を取る人数が増えてきている傾向がある。これは若い人だけでなく年をとっても大型二輪に乗りたいと思う人が一定数いることもあるだろう。ホンダの決断は、このように大型二輪を求める人と、どちらかと言えば実用性を求める人と、しっかり分けて販売戦略を立てている。
先行してカワサキも再編成
ホンダに先んじてカワサキでは2017年から国内販売網が再編成される。国内販売モデルのすべてを取り扱う「カワサキ専門店」と、排気量400ccまでの製品を取り扱う「カワサキ正規取扱店」の2系統の国内販売網を構築する。
これまでの販売網は、当社直営の「カワサキ専門店」と、カワサキ製品と他社製品の両方を扱う「カワサキ正規取扱店」で構成されており、いずれの販売店でもすべてのモデルを取り扱ってきたが、今回の再編では両者の取り扱いモデルを明確にするとともに、「カワサキ専門店」は、直営以外の販売店も加え、現状の6店舗から120店舗程度に拡大する予定だという。
両社とも今後、数としては縮小していく国内二輪市場に向けて、自社の商品に合う効率の良い販売方法を模索している。そして、大型かつ高級な商品を求めるユーザーを逃さないよう、販売店のキャラクターをシンプルで明確にしている部分は共通の傾向であろう。(高橋大介、モータージャーナリスト)